遠くから風に乗って聞こえてくる。卒業式によく流れる曲、仰げば尊し・・。
通過中の中学校からかすかに聞こえてくるその曲に耳を傾けてふと、思い出した。
もうすぐ高校の先輩達も卒業か・・と。別段、何かしろとも言われていないのですっかり忘れていたが。
「いつだっけ・・・卒業式って・・。」
「明後日だよ。」
「あー・・・あ!?」
独り言のように呟いた言葉にまさかの返答がきて、大げさな反応をしてしまう。一緒に帰っていたことを忘れていた自分の落ち度を戒めつつ、隣にいた幼馴染に先輩の卒業式について少しづつ話していく。
「あの先輩えー・・堅斗先輩か。卒業すんじゃん、何かしてんの?」
「そりゃ、手紙ぐらいは書かなきゃ失礼でしょうが。ちゃんと書いてるよ。」
「・・・・そりゃ、お偉いこって。」
皮肉っぽく言ったのが気に食わなかったのか、何が言いたいのよ、と怒った口調で言われた。
正直にいえば、そんなことをするように見えないと言いたかったが、喧嘩する気も起きず、別にと言ってはぐらかした。
「ちゃんと他の先輩のも書いてるんだからね!」
あぁそうですか。本命は堅斗先輩ですと言っているようなもんだが、スルーを決め込んだ。いや、考える時間がもったいないと思ったのだ。
俺は、何も用意せずに卒業式に行っていいものか・・?
そのことだけが、頭の中を支配していた。
しばらく歩いたあと、家の近くについて幼馴染と別れた。家に着くまでの距離はそこまでないのだが、かなりの時間がかかったように思えた。普段やらないような考え込む作業をしたからだと自己完結したが、その後もそれについて頭を悩ませ続けた。もちろん、内容は先輩の卒業式についてだが。
「・・と、考え続けて何も思い浮かばないって?」
「そういうことだ。」
「威張って言うなっつーの。」
中学の同級生に携帯で電話をかけ、今までのいきさつを話せば一言バカだろ、と言われた。
認めるのは癪だが、言っていることは確かにそうだ。黙っているとため息が聞こえ、そして疑問の声が返ってきた。
「逆にお前は何がしたいんだよ?」
「・・・・意外性のあるやつ。」
「漠然としすぎだろ。他の奴が何してるかわかんねぇのに。」
「女子はなんか、手紙書いてるらしい。」
それを言えば、携帯の向こう側から少し感心したような声が聞こえた。
「じゃ、男子はどうなんだよ。」
「あいつらができるとは思わねぇ。」
「思い込みって言葉を思いだせ。たぶんその線なら似たようなことをやってる男子が数人いてもおかしくねぇな。」
どこの哲学者だ、お前。と心の中でつっこみを炸裂させつつ、耳を携帯に必死に傾けた。
「意外性を求めてんだろ?だったら・・・」
・・・・徹夜しろってか?
「できねぇなら、さぼりでもしてればいいじゃねぇか。別に誰もとがめねぇだろ。」
「・・・それは嫌だ、やる。」
「俺助言だけだから、ガンバ~。」
ブチっ
・・・一方的に切られた携帯電話の画面を数秒見詰める。規則正しく聞こえる切れたことを表す音に少しイラッとして、携帯をベットの上に投げ捨てた。
ボスっ という音が聞こえたので、壊れるなんてことはないはず。すこし深呼吸をして、携帯を左手に持って机に向かった。紙と鉛筆を用意して携帯をフル活用して、言葉を一つ一つ書いていく。机に座ったのいつぶりだろうか・・・そんなことを頭の片隅で考えつつも作業を続行し続けた。
次の日、授業はなく部活もなく・・・とりあえず暇を持て余すつもりだった。
「えっと・・・あと買うものは・・。」
まさか買い出しに付き合わされるとは神様でもわかんなかったに違いない。しかも妹のな。
断わりゃいい話だが、両親がらみプラス誰も手伝える状況ではないらしい。という妹の頼み込みに負けたわけだが、玄関に行くまでにテレビの前でごろごろしている親父、ついさっきには、彼氏と思われる人といちゃつく姉を見つけ、あいた口がふさがらなかった。
姉はまだいいとして、親父だけはあとでシバくことにする。パンツとシャツだけでグータラしてるとか、イラっとする要素しかねぇ。
そんなことを、レジ袋2つを両手に持ちつつ考えていれば、妹が大声を出してある一点に向かって走り出した。
もちろん、意識が飛んでいた俺にどこに行ったかのとっさの判断なんかできないのだが、妹の止まった地点を見て一人納得した。
「久し振り、元気?」
「うん!お兄ちゃんもいるよ!」
幼馴染だ。同じレジ袋を持っている、そして中には野菜と思わしきものが大量に入っているようだった。よくすれ違わなかったなと、別の所で感動していると妹に早く来いと怒られる。
・・・なんか怒られてばっかだ。そう思いつつ少し早足で向かう俺は妹に甘いんだろうと思った。
「昨日ぶり、手紙書いたの?」
「誰が書くかよ。」
一言めにそれを言いやがるとは・・・言わなきゃよかったかと、今さら後悔した。
それに興味を持った妹が幼馴染に聞いて、すんなりばらしやがる幼馴染。
お前ら、プライバシーって知ってるか?適用されるかは知らねぇけどな。
とりあえず、話しこんでいる間に俺は静かにその場を後にした。妹の手伝い?あいつとって話してんのが帰り道だし、問題ねぇだろ。
家に帰ってレジ袋を生ものや野菜などの袋を冷蔵庫に無理やりつっこみ、ほかのは妹の部屋に放りこんだ。
夜遅くまで作業をしていたにもかかわらず、買いものに行き幼馴染には言わなくていいことを言われ、どうやら心身ともに疲れ切っていたらしく、ベットにダイブすると、数分も知らないうちに寝てしまった。
気づけば、午後8時前。帰ってきたのが午後3時と考えれば、5時間爆睡していたようだ。夕食を食べそこなっていたことに気が付き、リビングへ行けば妹が家族全員に話していた。
ここまでくれば、察しがつく人もいるだろうが、幼馴染の言っていたことだ。しかも、いないことを良いことに変な方向に話が走っている。
女装するってなんだ、おい。
「それでね!お兄ちゃんったらスカートを・・・」
「はかねぇよ、テメェの想像で勝手なこと言われると困る。」
「え?はいてないの?」
「誰がはくか!はいたら変態だろうが!」
寝足りないのか、えらく喧嘩腰な言動をしている。自覚はあるが、どうでもいいと思っているのか、変える気はない。机の上に置いてあった夕食を電子レンジで温め、部屋に持って行った。
リビングから、また変なことを言っている気がするが、言わせときゃいいかと思った。別に、めんどくさくなったわけじゃないからな。そこだけ言わせてもらう。
「あーー・・ダルい、っつったら怒られるだろうな。」
独り言がいつもの音量より大きくなった気もするが、気のせいだと言い聞かせ作業を再開した。
「・・・気にいんのかねぇ。」
作業が終盤に入ってから起こる不安に首を振り、今はただその作業だけに集中した。
いよいよ卒業式が始まった・・・と言っても、卒業式に在校生は代表しか入れないので、外で待っていた。もちろん、寝ないように一緒に先輩を待つ友達としゃべりながら。それでも、話題といえばどうやって先輩を送りだすかだった。
わざと泣くだとか、泣いてたら笑ってやろうとか・・・笑い飛ばしながらしゃべっていれば、卒業生たちが一斉にでてきた。みんな泣いていて、それでも笑顔で・・・先輩達もこちらに気づいて駆け寄ってくれたが、目が赤くなっている。泣いたあとのようだった。
女子たちは、一人一人先輩に手紙を渡していって全員に渡し終われば泣くということを打ち合わせでもしていたかのように、きれいにそろっていた。
男子たちは、先輩に呼ばれて一人一言ずつもらっていった。
どれも心に残る言葉ばかりで、男子も知らず知らずのうちに涙をためていた。
「次!」
先輩に呼ばれ、みんなから離れて先輩達の所へと向かう。部活もがんばってるし、これから伸びるとか色々言われた。俺も泣きそうになったが耐えた、耐えきった。そして、先輩が言い終わったのを見越して、誰も見ていないことを祈りつつ、先輩達に小さな紙を一枚ずつ渡した。
「開けて読んでください。俺の卒業プレゼント・・・と言っても、ショボいんですが。」
それを見た先輩たちは、もう一度涙を流しはじめ、口々に当たり前だ、ありがとう、と言ってくれた。
頑張ってよかった・・・という安心感と同時に俺も少しだけ涙が出た。それでも、俺はずっと笑い続けた。
最後の別れじゃないんだし、笑顔のほうがいいだろ?
小さな紙の内容は、先輩それぞれ違うように頑張った。むしろそのおかげで徹夜したんだけど・・・。教えてほしいとせがまれ、妹と幼馴染にこっそりと堅斗先輩のモノを読み上げた。
しあわせはいつもじぶんのこころがきめる
みつを
通過中の中学校からかすかに聞こえてくるその曲に耳を傾けてふと、思い出した。
もうすぐ高校の先輩達も卒業か・・と。別段、何かしろとも言われていないのですっかり忘れていたが。
「いつだっけ・・・卒業式って・・。」
「明後日だよ。」
「あー・・・あ!?」
独り言のように呟いた言葉にまさかの返答がきて、大げさな反応をしてしまう。一緒に帰っていたことを忘れていた自分の落ち度を戒めつつ、隣にいた幼馴染に先輩の卒業式について少しづつ話していく。
「あの先輩えー・・堅斗先輩か。卒業すんじゃん、何かしてんの?」
「そりゃ、手紙ぐらいは書かなきゃ失礼でしょうが。ちゃんと書いてるよ。」
「・・・・そりゃ、お偉いこって。」
皮肉っぽく言ったのが気に食わなかったのか、何が言いたいのよ、と怒った口調で言われた。
正直にいえば、そんなことをするように見えないと言いたかったが、喧嘩する気も起きず、別にと言ってはぐらかした。
「ちゃんと他の先輩のも書いてるんだからね!」
あぁそうですか。本命は堅斗先輩ですと言っているようなもんだが、スルーを決め込んだ。いや、考える時間がもったいないと思ったのだ。
俺は、何も用意せずに卒業式に行っていいものか・・?
そのことだけが、頭の中を支配していた。
しばらく歩いたあと、家の近くについて幼馴染と別れた。家に着くまでの距離はそこまでないのだが、かなりの時間がかかったように思えた。普段やらないような考え込む作業をしたからだと自己完結したが、その後もそれについて頭を悩ませ続けた。もちろん、内容は先輩の卒業式についてだが。
「・・と、考え続けて何も思い浮かばないって?」
「そういうことだ。」
「威張って言うなっつーの。」
中学の同級生に携帯で電話をかけ、今までのいきさつを話せば一言バカだろ、と言われた。
認めるのは癪だが、言っていることは確かにそうだ。黙っているとため息が聞こえ、そして疑問の声が返ってきた。
「逆にお前は何がしたいんだよ?」
「・・・・意外性のあるやつ。」
「漠然としすぎだろ。他の奴が何してるかわかんねぇのに。」
「女子はなんか、手紙書いてるらしい。」
それを言えば、携帯の向こう側から少し感心したような声が聞こえた。
「じゃ、男子はどうなんだよ。」
「あいつらができるとは思わねぇ。」
「思い込みって言葉を思いだせ。たぶんその線なら似たようなことをやってる男子が数人いてもおかしくねぇな。」
どこの哲学者だ、お前。と心の中でつっこみを炸裂させつつ、耳を携帯に必死に傾けた。
「意外性を求めてんだろ?だったら・・・」
・・・・徹夜しろってか?
「できねぇなら、さぼりでもしてればいいじゃねぇか。別に誰もとがめねぇだろ。」
「・・・それは嫌だ、やる。」
「俺助言だけだから、ガンバ~。」
ブチっ
・・・一方的に切られた携帯電話の画面を数秒見詰める。規則正しく聞こえる切れたことを表す音に少しイラッとして、携帯をベットの上に投げ捨てた。
ボスっ という音が聞こえたので、壊れるなんてことはないはず。すこし深呼吸をして、携帯を左手に持って机に向かった。紙と鉛筆を用意して携帯をフル活用して、言葉を一つ一つ書いていく。机に座ったのいつぶりだろうか・・・そんなことを頭の片隅で考えつつも作業を続行し続けた。
次の日、授業はなく部活もなく・・・とりあえず暇を持て余すつもりだった。
「えっと・・・あと買うものは・・。」
まさか買い出しに付き合わされるとは神様でもわかんなかったに違いない。しかも妹のな。
断わりゃいい話だが、両親がらみプラス誰も手伝える状況ではないらしい。という妹の頼み込みに負けたわけだが、玄関に行くまでにテレビの前でごろごろしている親父、ついさっきには、彼氏と思われる人といちゃつく姉を見つけ、あいた口がふさがらなかった。
姉はまだいいとして、親父だけはあとでシバくことにする。パンツとシャツだけでグータラしてるとか、イラっとする要素しかねぇ。
そんなことを、レジ袋2つを両手に持ちつつ考えていれば、妹が大声を出してある一点に向かって走り出した。
もちろん、意識が飛んでいた俺にどこに行ったかのとっさの判断なんかできないのだが、妹の止まった地点を見て一人納得した。
「久し振り、元気?」
「うん!お兄ちゃんもいるよ!」
幼馴染だ。同じレジ袋を持っている、そして中には野菜と思わしきものが大量に入っているようだった。よくすれ違わなかったなと、別の所で感動していると妹に早く来いと怒られる。
・・・なんか怒られてばっかだ。そう思いつつ少し早足で向かう俺は妹に甘いんだろうと思った。
「昨日ぶり、手紙書いたの?」
「誰が書くかよ。」
一言めにそれを言いやがるとは・・・言わなきゃよかったかと、今さら後悔した。
それに興味を持った妹が幼馴染に聞いて、すんなりばらしやがる幼馴染。
お前ら、プライバシーって知ってるか?適用されるかは知らねぇけどな。
とりあえず、話しこんでいる間に俺は静かにその場を後にした。妹の手伝い?あいつとって話してんのが帰り道だし、問題ねぇだろ。
家に帰ってレジ袋を生ものや野菜などの袋を冷蔵庫に無理やりつっこみ、ほかのは妹の部屋に放りこんだ。
夜遅くまで作業をしていたにもかかわらず、買いものに行き幼馴染には言わなくていいことを言われ、どうやら心身ともに疲れ切っていたらしく、ベットにダイブすると、数分も知らないうちに寝てしまった。
気づけば、午後8時前。帰ってきたのが午後3時と考えれば、5時間爆睡していたようだ。夕食を食べそこなっていたことに気が付き、リビングへ行けば妹が家族全員に話していた。
ここまでくれば、察しがつく人もいるだろうが、幼馴染の言っていたことだ。しかも、いないことを良いことに変な方向に話が走っている。
女装するってなんだ、おい。
「それでね!お兄ちゃんったらスカートを・・・」
「はかねぇよ、テメェの想像で勝手なこと言われると困る。」
「え?はいてないの?」
「誰がはくか!はいたら変態だろうが!」
寝足りないのか、えらく喧嘩腰な言動をしている。自覚はあるが、どうでもいいと思っているのか、変える気はない。机の上に置いてあった夕食を電子レンジで温め、部屋に持って行った。
リビングから、また変なことを言っている気がするが、言わせときゃいいかと思った。別に、めんどくさくなったわけじゃないからな。そこだけ言わせてもらう。
「あーー・・ダルい、っつったら怒られるだろうな。」
独り言がいつもの音量より大きくなった気もするが、気のせいだと言い聞かせ作業を再開した。
「・・・気にいんのかねぇ。」
作業が終盤に入ってから起こる不安に首を振り、今はただその作業だけに集中した。
いよいよ卒業式が始まった・・・と言っても、卒業式に在校生は代表しか入れないので、外で待っていた。もちろん、寝ないように一緒に先輩を待つ友達としゃべりながら。それでも、話題といえばどうやって先輩を送りだすかだった。
わざと泣くだとか、泣いてたら笑ってやろうとか・・・笑い飛ばしながらしゃべっていれば、卒業生たちが一斉にでてきた。みんな泣いていて、それでも笑顔で・・・先輩達もこちらに気づいて駆け寄ってくれたが、目が赤くなっている。泣いたあとのようだった。
女子たちは、一人一人先輩に手紙を渡していって全員に渡し終われば泣くということを打ち合わせでもしていたかのように、きれいにそろっていた。
男子たちは、先輩に呼ばれて一人一言ずつもらっていった。
どれも心に残る言葉ばかりで、男子も知らず知らずのうちに涙をためていた。
「次!」
先輩に呼ばれ、みんなから離れて先輩達の所へと向かう。部活もがんばってるし、これから伸びるとか色々言われた。俺も泣きそうになったが耐えた、耐えきった。そして、先輩が言い終わったのを見越して、誰も見ていないことを祈りつつ、先輩達に小さな紙を一枚ずつ渡した。
「開けて読んでください。俺の卒業プレゼント・・・と言っても、ショボいんですが。」
それを見た先輩たちは、もう一度涙を流しはじめ、口々に当たり前だ、ありがとう、と言ってくれた。
頑張ってよかった・・・という安心感と同時に俺も少しだけ涙が出た。それでも、俺はずっと笑い続けた。
最後の別れじゃないんだし、笑顔のほうがいいだろ?
小さな紙の内容は、先輩それぞれ違うように頑張った。むしろそのおかげで徹夜したんだけど・・・。教えてほしいとせがまれ、妹と幼馴染にこっそりと堅斗先輩のモノを読み上げた。
しあわせはいつもじぶんのこころがきめる
みつを