(…ほうか、晃一の言い辛い訳な、ほんな事じゃったんか…)
幼心が抱いた羞恥心の芽生えだったのだ。
(…まあ、晃一も、綺麗な水を汚した、思ったようじゃ…)
微笑ましい晃一の純情さだとキクは思った。
幼い晃一の鋭敏な理解力にキクは驚き舌を巻いた。
「あのな、晃一、小便したんは、袋の中しかないけんな」
「もう、ほうじゃろが、バアやん」
その水を飲んだと言うキクの話しに晃一は身ぶるいした。
「ほの、汚い水な、ワシ飲んどったんか」
「ほれは、ほうじゃ、晃一」
晃一の気分の悪そうな仕種にキクは冗談気味に言った。
「ほんなん、バアやん、もうワシ気持ち悪いわだ」
「まあ、晃一、ほうじゃのう」
関心を寄せた兄の好夫もキクの話しに耳を澄ませた。
(…よかった、兄の好夫も、聞いとるわだ…)
意気込みキクの話しがいよいよ佳境に入った。
「ほれが、ちょっと違うけん、今から話しちゃるわだ」
「もう、どんな事なん」
汚れた羊水を想像したのか晃一は気持ちを害したようだ。
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