晃一の後ろ姿を追い、何事にも好奇心の強い悪戯盛りの目

の離せない、母の心が休まらない晃一だった。

 

「のう、晃一、バアやんの言う事、よう聞きなはれよ」

 

 母の和代は楽しそうな3人の後ろ姿を見送った。

 

(…ほれ、孫との遠出をな、バアやんも悦んどるけん…)

 

 約10分ほど歩けば町道が緩い上り坂になった。

 

「なあ、バアやん、せこいじゃろがだ、ほなけんなワシが前

からじゃわだ、ほれ手を引っ張っちゃるけん」
「ほうか、ほな晃一、頼むわだ」

 

 晃一は両手を出しキクの左手を掴んだ。

 

「ほれだ、バアやん楽ちんじゃろが、ほな今度はな後から押
しちゃるけん、ほれ、よいしょ、よいしょ」

 

 片時もジットしない晃一は、今度はキクの後ろに回りキク

の腰の辺りに手を添え、掛け声を出し押し始めた。

 

「もう、晃一が後からな、ほん強うにじゃわだ、力を入れる

けん、楽じゃわだ、もう晃一の力は凄いけん」

 

 病み上がりのキクだったが、前後から晃一が戯れるのをキ

クは嫌がなかったし、はしゃぎ回る晃一が好きだった。

 

(…もう、晃一は、息子の龍夫とよう似とるわだ…)

 

 祖母のキクは晃一の素直な快活さに触れ、晃一のあどけな

い仕種に龍夫の幼少の頃が、鮮明に脳裏を過り暫し偲んだ。

 

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