路子だと晃一は確信し戸惑い頬に火照りを感じた。

 

「もう、やっぱり、ミッちゃんじゃんか」

 

 路子と久々に逢った悦びからか晃一の胸が時めいた。

 

「なあ、晃ちゃん、路子が嫌いになったん違うん」

 

 路子は哀しい流し目を晃一に向けた。

 

「もう、ほんな、ミッちゃん嫌いじゃないわだ」

 

 照れ隠しに晃一は少し乱暴な言い方をした。

 

「ほんま、ほな晃ちゃん、明日な手を繋ぎ学校に行こうな」

 

 綺麗な笑顔を路子が久々に晃一に魅せた。

 

「けどな、ミッちゃん、誰かと行っとっんちゃうか」

 

 好きな路子に誘われた悦びの余り、翌日から手を繋ぎ行き

たかったが、晃一は勿体ぶり聞いたのだ。

 

「ほれが、シゲオちゃんにな、学校のいにしなに、苛められ

泣かされるけん、路子な好かんのじゃけん」

 

 路子は晃一に背中を向け、道端にしゃがみ込み、タンポポ

の花を摘みながら、恥じらうよな声を出した。

 

「もう、ミッちゃんだ、あいつに泣かされとるんか、ほんな

んじゃったら、ワシが学校いっしょに行っちゃるけんな」

 

 恋しい路子との残り恋が再び甦り晃一は威勢がよかった。

 

           ー203ー