晩秋を迎え紅葉も色付いた頃だった、とある日の朝礼の時
に担任の先生から、美保子の死が告げられた。
(…ああ、あの日が、美保ちゃん…)
美保子の命は秋の木の葉のように散ったが、来春には再び
若葉が芽吹き新緑豊かに甦り、悦びに包まれた青空に舞う乙
女の優雅さが、晃一の眼前に浮かんだ。
なあ美保ちゃん、ワシじゃわだ
今、頭の中が空っぽじゃけん
心の中は真っ暗じゃ何も見えん
美保子を失った晃一の胸中を誰も予測は出来なかった。
体の中から、血が引いたみたい
ワシの体は蝉の抜け殻じゃわ
なあ美保ちゃんワシ風船のよう
空に舞い上がり、そうじゃけん
美保ちゃんもうおらんのか
まだ信じとれん夢じゃろかなあ
学生服の左内ポケットに手を入れた晃一は、美保子から預
かった笑顔の写真を取り出し、目を潤ませ見詰めた。
けんどワシの命の中にはじゃわ
美保ちゃんが、生きとるけん
なあ美保ちゃんワシの命の中に
これからもワシ写真を見るけん
はかない夢と消えた、美保子との惜別の思いを忘れ、美保
子の死を受止めようと努力したが、晃一には不可能だった。
ー126ー