思い遣りを込め労わるように院長は母の和代に言った。

 

「ほれ、今はキクやんも、和代ちゃんが頼りじゃわだ、まあ

辛いけんど一生懸命看病しなよ、ええ事もあるけん、まあせ

こいじゃろが、もう直に龍夫が戻るん、信じるんじゃわだ」

「ええ、先生の言われる通りに世話しますけん」

 

「ほれだ、遠慮せんと薬取りにな、今晩が大事じゃけん」

 

 優しい医道に長けた先生の何気ない配慮の一言が、患者は

勿論だが、家族の心も癒した名医の往診だった。

 

 心癒される故郷の景色にキクの命は日々甦った。

 

 キクが病床に伏し半月余りが過ぎた。

 

「のう和代、ほんまに今度は、ように面倒掛けたけん、こん

な姑の看病じゃけん、芯から疲れたじゃろがだ」

「ほんな、バアやん滅相もないけん」

 

 感謝の言葉をキクが和代に掛け労った。

 

「もう、バアやんだ、ほんなん当たり前じゃけん」

「いやいや和代、ほんま嬉しかったんじゃわだ、まあじゃわ

今度ばかりは、よう世話になったわだ」

 

 日を追う毎に元気を取り戻し、献身的な看病を続けた母に

駆け引きなしに、祖母キクが心の底から礼を言った。

 

「のう和代、まあほの辺をブラブラするけんな」

「ええ、バアやん無理せんようにな」

 

 キクの頬がフックラとし血色が戻り溌剌とし若返った。

 

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