吉例顔見世大歌舞伎 夜の部
顔見世大歌舞伎、夜の部を観てきました。
一、御存 鈴ヶ森
刃傷沙汰を起こしてお尋ぬ者の美貌の若武者、白石権八(菊之助さん)と江戸のドン播随院長兵衛(松緑さん)とのやりとり、台詞が粋。菊之助さんのゆったりの殺陣、松緑さんの旦那ぷりが男前。
二、勧進帳
歌舞伎十八番。染五郎さんが初主演(弁慶)で話題の一幕。お父さんの幸四郎さんが冨樫。叔父さんの吉右衛門さんが義経。息子さんの金太郎君が太刀持(お小性)という布陣。プレッシャー計り知れず。
染五郎さんは線が細くて、粋な若旦那のイメージでしたが、骨太な弁慶役、演じきってらっしゃいました。幸四郎さんの弁慶を観ているから、やはり野太さや灰汁の強さはお父さんかなぁと思ってしまいますが、染五郎さんの広がりを感じました。弁慶のいじらしい忠誠心と其れに男惚れしてリスクを顧みず見送る冨樫の男気が何とも美しい、ストーリーとして流石の一幕。
三、義経千本桜 すし屋
通しで観た経験のある「義経三本桜」の中のエピソードです。ここでの主人公、いがみの権太を菊五郎さん。普段は悪党のゴロツキですが、落ち延びて潜伏している主家の平維盛(時蔵さん)一家を、自分や家族を犠牲にしてでも守り抜こうとする忠義心がじわっとします。菊五郎さんや仁左衛門さんって、色っぽい悪役が本当にお似合い。時蔵さんのボンというか若っぷりもいい味が。
それにしても忠義…現代社会に滅んだ感覚です。
素敵な晩秋の宵でした。いい舞台を観て、自分の引き出しになんだかいいものがストックされていく気がします。出力も大事だけど、いい入力は本当に必要。


