月曜日に参加した会議。
 メインテーマは「学士課程教育の構築と教育の質保証」。
 非常に堅苦しいテーマですが、最近、業界(?)では学士課程という言葉が流行しており、学士課程が何を意味するのかも知らなかった小生にとっては、いい勉強になりました。
 近年、大学の卒業式では、卒業証書のみならず学位記ももらえます。近年といってももう10年以上前からです。それまで(1991年まで)は、大学設置基準で学士の種類などが定められていたのですが、その時代には、大学が、大学卒業要件を満たした者に学士を名乗ることを認めるという制度だったそうです。いいかえれば、大学が卒業者に学士(たとえば経済学士とか商学士とか)の「称号」を与えたということで、これはあくまでも「称号」であって、「学位」ではないという位置付けだったわけです。
 それを、1991年に大学設置基準を大綱化し(う~ん、懐かしい)、その一環として学士を「称号」から「学位」に変更して現在に至っています。

 学位といえば、我々の時代には、修士課程を終えてもらう修士、博士(後期)課程を終えてもらう博士だけでした(しかもどちらもしかるべき論文を提出してもらうものでした)。
 それが、修士や博士と同じように、大学を卒業した者にも学士という学位を授与することになったわけです。修士の学位をもらうのに修士課程、博士の学位をもらうのに博士課程があれば、同じ学位である学士の場合にも学士課程があってもおかしくありません。
 つまり、昨今話題になっている学士課程というのは、学士という学位を授与する課程ということだったわけです。あまりに当たり前のことですが、当日の話を聞くまで、恥ずかしながらそんな単純なことに思いが至りませんでした。

 でも、もう10年以上前に制度変更がなされているにもかかわらず、なぜ今、学士課程教育が問題になっているのでしょうか?
 会議のテーマでは、今まさに制度が出来たかのように「学士課程教育の構築」となっています。また、会議資料として配付された中教審大学分科会の大部の冊子のタイトルも「学士課程教育の構築に向けて」。これは中教審への答申という形で、近々正式な文書になります。

 ところで、なぜ今、学士課程教育が問題かという点ですが、レジュメ集には、面白い調査結果が添付されていました。それは、学位に付記する専攻分野の種類についてです。
 先に書いたように、我々の時代には、大学で経済学を学べば経済学士、商学を学べば商学士など、特定の分野を表す称号が与えられました。大学院では、経済学修士や経済学博士ということになっていました。それが今では、学位は学位なので、学士課程では「学士」、修士課程では「修士」、博士課程では「博士」だけです。ただし、どんな種類の学位を専攻したのかを明示するために、学位の後ろにカッコ書きで、専攻分野を付記することができるようになっています。つまり、経済学科では学士(経済学)ですし、経営情報学科では学士(経営情報学)、経済法学科では学士(経済法学)という具合です。
 調査では、学士課程を置く707校(回答数664)の専攻分野の種類を、その名称とともに明らかにしていますが、これが驚くほどの数です。なんと、580の専攻分野が付記されています。
 つまり、日本の大学を卒業した者には「学士」という学位が付与されますが、その専攻分野が580に分化されているというわけです。そこで問題になったことは、まず、これだけ多くの専攻分野が、果たして同等の学問レベルを保っているのかという問題でした。つまり教育の質に関する問題です。
 次に、かつてのように称号としてならば、国内の問題として割り切ることができましたが、学位ということになれば、世界に通用するかどうかという問題も生起しました。いいかえれば、学士に付く専攻分野を英語名称に変えた場合、それが世界に通用するかという問題です。くどいようですが580もの専攻分野があり、これは今後も増える可能性を秘めています。他の大学にはない名称の学部学科名を付けようと思えば思うほど専攻分野は増え続けます。名称一覧を見ると、「これ何?」と思ってしまうものも少なくありません。卑近な例をいえば、小生が所属する学科名称も、英語にするとどうもしっくりこない名称になってしまいます(今でも話題になるほどです)。
 これらが、昨今いわれている学士課程教育の問題のようでした。

 結局のところ、それがいいとか悪いとかという問題とは別に、大学教育に関する国の方向性が変わってしまっているわけですし、学士課程という表現がクローズアップされていることから、私立大学にあって、学科というような狭い範囲で学生を教育するなんていう時代は、少なくても、方向性としては終焉を迎えていると考えなければならないといえるでしょう。
 一方、大学は、学部=学士課程の集合体ですので、まず最低限、学部全体の質を高めることを考えなければならないわけです。こうしたことは、学士力(文部科学省)とか、社会人基礎力(経済産業省)、就職基礎力(厚生労働省)というキーワードの中に含められている考え方ですし、このような能力を学部として醸成することが結果的に大学の質の向上につながるという考え方が、大学現場以外に出来上がっていることを認識しなければなりません。
 その一つの試みとしてICUの学科廃止、31メジャー制の導入が紹介されましたが、この制度、小生の思考ともシンクロしていて、非常に興味深いお話でした。

 でもねえ、本当は、こういう話というのは組織のトップが聞いて、それを我々に還元するものではないのかえ?

 ・・・と、一応、出張報告でした。