何とも物騒なタイトルを付けてしまいましたが、内容は会計処理にかかわる内容ながら、主人公が殺人事件に遭遇するミステリーです。

 山田真哉『女子大生会計士、はじめました』(角川文庫、2007年11月)

 山田真哉氏といえば『さおだけ』や『食い逃げ』など、会計に関する読み物でそれなりに著名な会計士さんで、会計とは縁遠いけれど、何だか話題だし読んでみようかなと思って手に取った方も多いでしょう。
 この山田氏、もう一つ書いているのが女子大生会計士シリーズ。
 最初は2002年12月に出版された『女子大生会計士の事件簿』で、現在は第6巻まで出版されています。
 そしてこの本『女子大生会計士、はじめました』は、『女子大生会計士の事件簿』とはちょっとテイストが違う内容のものを文庫本化したもののようです。
 最初に『女子大生会計士の事件簿』を読んだとき、『主人公は大学生になって会計士になったのだろうから、大学4年かな』と漠然と思っていたのですが、本書において、その謎が明かされます。ナント、1次試験から受験して合格していました。つまりは、商業高校を卒業して公認会計士になり、その後、ある人の薦めで大学に入学したというわけです。もちろん旧試験制度下での合格ですので、会計士補として勤めていた期間もありますから、女子大生とはいっても、いわゆる現役生の年齢からは多少上なのでしょう。(笑)

 さて、この本では、5つの監査がらみの事件が紹介されています。
 その3番目で殺人事件が発生します。
 クライアントの監査に出向いた会計士(主人公、藤原萌実)と会計士補(柿本一麻)のコンビが、逆粉飾の疑いを持って調査を始めます。しかし、物語は監査事件というよりはクライアント企業の重役たちの過去をめぐって展開し、思わぬ方向に進んでいきます。そして結局、殺人が発生し、萌実も殺されかけてしまいます。
 本当は息詰まる流れなんでしょうが、読んだ時期が悪かったようで、石持浅海氏の大胆な謎解きがいまだ頭に残っていますので、軽~いミステリーにしか思えませんでした。(苦笑)

 ところで、山田氏の本は、おしなべて文章が平易で読みやすいですよね。
 山田氏は大学で文学を専攻した方で(文学部出身の会計士は決して異色ではありませんが)、さまざまな文学作品を読みあさったのかもしれません。そしてもしかすると、文章を書くのが好きな方なのかもしれません。つまりもともと本好きで文章を書くのが好きな人が会計士になったと考えられるわけです。
 この点が、他の会計士や企業の実務家、あるいは大学教員が書いている類書と違っている点でしょう。玄人受けする内容ではあっても、何十万部も売れるわけではありません。山田氏の本は、「ううっ、大胆すぎる!」と思ってしまう内容も少なくありませんが、それでも、会計が分からない人が読んで理解できる程度に単純化しています。これはちょっとマネができません。「わかりやすい」「おもしろい」とキャッチコピーが書いてある会計本はたくさんありますが、そのほとんどが「会計を知らない人には難しいのではないの?」と思えるものばかりですので、それに比べれば遙かに読みやすいと思います。

 と、えらく山田氏に肩入れしているように思われるかもしれませんが、会計を知らない、でもちょっと興味がある、という方々には、やっぱり山田氏から入った方がいいんじゃないのかなと思ってしまうわけでして・・・。

 以前、S先生から「先生も何か書いたらどうですか?」といわれたことがあります。でもまったく売れないでしょうからその気にもなりませんでした。
 だって、タイトル『管理会計殺人事件』として、最初に書くのは、きっと「管理会計の意義と役割」でしょうから。(苦笑)