「先生、木曜日の夜、タクシーに乗っていませんでしたか?」
 講義終了後、一人の男子学生が教卓のところにやってきて質問した。
 「あの雨の夜?」
 「そうです。やっぱり先生でしたか。」
 「って、もしかしてタクシーと接触したのが君?」
 「はい。」
 「何でもなかったの?」
 「はい、全然。それより、予想外のところからタクシーが来たもので。」
 彼によれば、交差点の横断歩道を自転車で横断中、最初のタクシーは止まってくれたのだが、その後ろから来たタクシー(小生が乗車中)が片側二車線の空いている方から突っ込んできたという。
 「雨の中、どうして自転車で?」
 「雨が降る前に自宅を出たので仕方なく自転車に乗って帰るところでした。」
 「夜も遅かったでしょ?」
 「いろいろ立ち寄るところがありまして。」
 「それにしても何でもなくて良かったね。」
 「はい。」