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ストーリー:
大人達が子供の頃に戻って遊べる娯楽施設「20世紀博」がかすかべにでき、しんのすけの両親ヒロシとミサエもすっかりどハマり。そんな娯楽施設を運営するイエスタデイワンスモアという組織が"懐かしい匂い"によって大人達を洗脳し日本を20世紀に戻そうと企てる。
その"匂い"によってすっかり子供のようになってしまった大人達を現実に引き戻すべくしてしんのすけらかすかべ防衛隊が立ち上がる。
感想:
今作が掲げているテーマはズバリ「幻想に逃げず現実と向き合い、未来へ生きていく」ということ。こういった普遍的であるテーマは時代、環境、世代関係なく(多少の違いはあるが)響くものがある。そして日本人なら誰もが知っているであろう「しんのすけ一家」で描くからこそより響き、感動する。
今作、クレしんムービーの中でも1、2を争うほどの名作映画であるが、その要因は間違いなく「大人達が観て楽しめる」ことだと思う。
もちろんクレしんアニメ特有のクッソくだらないギャグがふんだんに使われていて(特に前半)子供もいつも通りバカ笑いして楽しめるのだが、その子供を連れてきた親は恐らく子供がバカ笑いしている隣で目玉が飛び出るぐらいバカ泣きしているはず。

戦後の高度経済成長の空気をこの身で感じた"大阪万博世代"は毎日毎日新しいものが目に入り、毎日毎日が夢のような日々を送っていた。自分が生まれた年は20世紀のほぼ終わりの頃なので実際に体験はしていないが、他の映画、マンガ、学校での勉強、親の会話などでなんとなくその時がどんくらい夢溢れた年だったかは伝わってくる。

そんな毎日が今よりもずっと未知で夢溢れた子供時代に戻りたい願望が叶う前半部。ヒロシ、ミサエら大人達は"匂い"によって洗脳されていたとしても芽が輝いていて非常に心地よく見える。
一方でしんのすけら子供達は日頃から憧れを持っていた大人の行動をしてみるのだがやはり思っていたのとは違くて、かなり大変。

そこでこのままではダメだ!!としんのすけらかすかべ防衛隊が大人達を現実に戻そうと決意し、奮闘する後半部へ。

洗脳された大人達が楽しく過ごしている「20世紀博」に着いたしんのすけはヒロシを見つけ、"懐かしい匂い"に勝るほどの強烈な悪臭を嗅がせ洗脳を解くのだが、ここがもうやばい。
洗脳が解かれるとともに画面に映し出されるのはヒロシ幼稚園~現実までの簡単な回想シーン。
そこでは恋愛して失恋して上京して就職して上司に媚びへつらって結婚して出産に立ち会って家庭を持つまでが描かれている。ここに二重の感動が含まれている。
まず自分に照らし合わせて号泣。それと日本人みんなが知ってるしんのすけ一家の大黒柱、ヒロシもアニメの中とはいえ私たち同様に懸命に生きていたという感動。ノスタルジーに浸りながらも家族愛を感じ泣かずにはいられない感動の名シーンである。

クライマックス、日本中により強力な"懐かしい匂い"を散布する機械を止めるためしんのすけがタワーを登り頂上を目指すシーンでの構図が非常に良くできている。
今作の元凶でいてノスタルジーの象徴的存在でもあるケンというキャラとその愛人はそのタワーをエレベーターで楽々と登る一方でしんのすけは怪我をしても泣きべそかかずに前だけを見て頂上目指して走り続ける。懸命にがむしゃらに現実を生きて、疾走するしんのすけを見ている大人達の洗脳が徐々に解けていく。その様子を見てケンと愛人は日本を20世紀の時のようにするという計画を諦める。
しかしケンはやはりすべてのものが当たり前で夢が死んだ現実では生きていけないと言い愛人とともに飛び降り自殺を図る。
片足が空中に出た瞬間、しんのすけの「ズルいぞ!」という叫び声とともに二羽の鳥が彼らの前に飛び出てくる。そこで愛人が我に返ったのか「死にたくない…!」と泣き出すのである。
鳥が飛び出てきたのは近くに巣がありこの2人に襲われると思ったから飛び出したのだろう。そしてしんのすけは「ズルいぞ!………2人だけバンジージャンプしようとするなんて!」と全く見当違いのことを言っていた。しかしケンと愛人には深く胸に響く言葉だった。


現実が嫌だから自分の都合のいい世界に引きこもり幻想に生きた者達に対するしんのすけの「ズルいぞ!」は簡単な一言ではあるが正に正論でその通りである。
しかし人間誰しもは現実から逃げたいと思うときはある。映画鑑賞なんざむしろ立派な現実逃避である。
これを観た後では日頃の物事の見方が変わる。変わるというか改めて気づかされるのである。



この先ずっと語り継がれるであろう名作映画であることは間違いないでしょう。