「ごめんっ菜々ちゃん

彩預かってくれへん?」


「仕事?」


「撮影の日が今日になって

恵も出張やしごめんな?」


「そっか頑張って

彩くんご飯とか...


「もう食べてある

昼と夜お願いしてもいい?

お土産買って帰るから」


「気にせんでええよ

ほら、行っといで」


「ありがとぉぉ...


お隣さんの朱里は

高校からの付き合い

その息子の彩くん

美優紀と同い年

真面目でしっかりもの

そして...


「さーちゃん!!!」


ギューーーッ


「美優ちゃんおはよ」


美優紀の将来の旦那さんらしい


「ごめんな彩くん」


午前中はテレビを見させて

お昼を食べて

午後は公園に来た


「さーちゃん手離しちゃいや!」


「うん」


ホンマに彩くんが大好きなんやな


「滑り台!」


美優紀は滑り台を見た瞬間走り出し

後ろから彩くんが追いかける

滑り台は人気みたいで

ふたりは仲良く順番待ちしてるみたい


「美優の番」


(どけー)

(どけどけ)


「なによ!」


(俺らが先)


「ちゃんと並び!」


(うるせぇブス!)


「ブスちゃうもん!」


(どけよ!)


「どかへん!」


(うっとおしいなぁー!)


男の手が美優紀に当たって

美優紀はバランスを崩して

滑り台の滑りへ後ろから倒れる


「あ、危ないっ!」


私は慌てて駆け出した

でもその時彩くんが美優紀をかばって

そのまま滑り落ちる

手は摩擦で皮がめくれ

血が流れている


「彩くん大丈夫!?」


駆け寄ったが彩くんは

黙って立ち上がり

滑りを駆け上がり

男の子達の元へ


(な、なんだよ)


「美優紀を傷つけたら

僕が許さへんっ!

美優紀に謝れ!!!」


彩くんは男の子達を

滑りから押し

美優紀の前まで連れていく


「謝れっ!!!!」


(わ、わるかった)

(ごめん...


男の子達はそそくさと逃げていった


「さーちゃん手が...


「美優ちゃん痛いとこない?」


「う、うん...


「ならいいっ、ヘヘッ」


「さーちゃんっ!」


美優紀は飛び上がり

彩くんに抱きついた


チューーーーーッ!!!


「さーちゃん大好きっ

美優の王子様っ」


美優紀が彩くんのこと

大好きな理由なんかわかった


家に帰って夜になると

朱里が彩くんを迎えにきた


「ホンマにごめん!」


「ええよ彩が自分でしたことやし」


「でもあんな怪我」


「ええってば

朱里がおっても同じやったし

彩頑固やからさぁ」


「あー朱里に似たんや」


「恵に似たんですー

じゃあ連れて帰るわ

彩~!帰るよー」


...ママ」


「美優紀」


きっと美優紀のことや

彩くんと離れへんって

駄々こねるんやろう

そう思ったけど

悲しそうな顔して何も言わない

...がまんしてるんやな


「ママー」


「彩、手大丈夫?」


「うん...ママ、菜々ちゃんの家

泊まっちゃだめ?」


「え...?」


朱里と顔を見合わせて

彩くんに目をやると

優しい顔して美優紀を見ていた


「彩くん

今日はうちに泊まり?」


「うんっ」


「っ...やったぁぁー!!!

さーちゃんっ!」


「うっ美優ちゃん...重いっ」


「いつか二人ホンマに結婚するかもよ」


「まぁしゃーないんちゃう?

ここまで想い合ってるなら」


「やな」