「みるきー!うわめっちゃ可愛い

茉由に相手役務まるかなぁ」

まーちゅんかっこいいで!

行こーっ!」

「はいよ姫様」

手を繋いで

去っていく2

タキシードのタイを緩め

敗北感を味わう

誘おうと思ったけど

勇気が出なかった


「はぁ冷たっ!」


「顔死んでますよ」


今日のパートナーは楓子

プロムは相手がおらんとアカンから

楓子を誘った


「ごめんなさい

「え?」


「みるきーさんじゃなくて」


...いやそれは」


「みるきーさんのこと

好きなんですよね?」


「好きっていうか...


初めから分かってました

みるきーさんのこと好きやって

...でも嬉しかった

彩さんに誘ってもらえて」


「大げさな


「嬉しかった


楓子は悲しそうに

俯いた

何でそんな顔するん?


「これでも

みるきーさんに負けへんように

お洒落したし

化粧したんです


分かってる

いつもの楓子とちゃうこと

それは俺のためなん?


いい思い出

一応はペア私とやし

入場記録には残ってる

それで十分です」


「ちょい楓子どこえっ」


「っ誘ってくれて

ありがとうございます

みるきーさんのこと

諦めたらダメですよ」


「泣いてた


よく分からんくてベンチに腰掛ける

さっきの楓子の顔が頭から離れへん

何で泣くん?


「おいアゴ!」


「岸野グハッ!」


「ふざけんなよ!!」


「なんやねん急に


「楓ちゃんのこと

泣かすなんて許さへん」


「そんなん


「お前は何もわかってへん

楓ちゃんはお前に誘われたくて待っててん

お前はみるきー誘えんかったから楓ちゃん誘った

それでも楓ちゃんは喜んでた

お前に綺麗って思ってほしかってん

それやのにお前はみるきーしか見てへん

楓ちゃんが可哀想や!

気持ちないなら中途半端なことすんな!」


楓子のこと傷つけて

自分だけがかわいそうやって

自分だけ恋してるつもりやった

ホンマに最低最悪


「彩、踊ろ?」


「え?まーちゅんは?」


「せっかくやし踊ろうや

始まる前にな楓ちゃんが

思い出作りに皆と踊ろって

でも楓ちゃんはどっか行っちゃった」


またや」


「彩?どうしたん?」


楓子はどんな時でも影で俺を支えてくれた

笑って側にいてくれた

今更気づいた

こんなにも俺を愛してくれる人

美優紀よりずっと近くで

近すぎて気づかんかった


「美優紀ごめん!

俺行かへんと!」






「楓子!!」


「ッ!彩さん?

プロムは?」


「余計なことすんな!」


「え


美優紀のことはええねん!

楓子踊ってくれ」

泣いちゃったから?

気にせんといてください

私は大丈


「俺が大丈夫じゃないねん!

今、楓子が手を取ってくれへんと

俺は


「...みるきーさんは?」


やっと気づいた

こんなにも近くに

俺のクイーンはいたんや」


「彩さん


「俺と踊ってください


「喜んで


重なった手をぎゅっと握る

手の甲に冷たい雫

顔を上げると楓子が

笑いながら泣いていた


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