わたしはWTIさらに買い進んでいる。

原油安相場、目立つ強気派、コールオプション、買い急増、供給拡大歯止め見込む(ポジション)

2016/02/13  日本経済新聞 朝刊  19ページ  1240文字  PDF有  書誌情報
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 原油価格は米国指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が再び1バレル25ドルに迫り、12年9カ月ぶりの安値圏に下落した。リスク回避の動きが広がり原油市場でも売りが勢いを増す。そんな中、一部の投資ファンドなど強気派は市況の反発をにらんで動き始めている。根拠は近いうちに供給拡大に歯止めがかかるとの見方だ。
 長引く市況の低迷を受け弱気派が多い原油市場で、1月末に著名なファンド運用者の戦略転換が話題となった。米ゴールドマン・サックスなどですご腕の原油トレーダーとしてならし、現在はヘッジファンドを運用するピエール・アンデュランド氏だ。昨年夏から原油価格の30ドル割れを予測してきたが、「底入れは近い」と指摘。年内に50ドルまで上昇するとの見通しを示した。
 国際エネルギー機関(IEA)は2月の月報で、原油価格の下落リスクがさらに増しているとの見方を示した。石油輸出国機構(OPEC)加盟国は1月も高水準の生産を続け、需給が引き締まる兆しは見えてこない。
 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之・主席エコノミストは「需要の鈍化も意識され、WTIは20ドルを試す可能性が高い」という。実際に生産企業や一部の投資ファンドはオプション市場で「売る権利」であるプットを買い、20ドル割れに備えている。
 しかしアンデュランド氏の戦略転換にみられるような風向きの変化はあちこちで見て取れる。先物市場では投機筋が買い持ち高を積み上げている。オプション市場でも「買う権利」であるコールの買いが急増している。45ドルの建玉(未決済残高)は、3月物では1月末に比べて5割増の3万4千枚(1枚1千バレル)に膨らんだ。投資ファンドや需要家が原油価格の反発をにらみ、保険をかけている。
 原油生産者が価格低迷に耐えられず、供給増に歯止めがかかるとみている。原油が20ドル台では多くの産油国で現金収支ベースでの生産コストを下回る。エレメンツキャピタルの林田貴士・代表取締役は「操業を続ければ現金が流出する状況で、30ドル割れは1~2カ月しか続かない」という。
 旧ソ連の産油国アゼルバイジャンでは自国通貨安で食糧価格が高騰し、1月に大規模デモが発生した。ベネズエラやナイジェリアなども苦境に立つ。国営企業が原油生産を手がける産油国で、財政難は生産障害に直結しかねない。「現在の価格では生産者や中東の国家財政が持ちこたえられない」(三井物産の松原圭吾・最高財務責任者)との指摘が現実味を帯びる。
 しぶとさを見せてきた米シェールオイルでも、淘汰が始まってきた。米エネルギー省は9日、今年の原油生産量は前年比8%減の日量869万バレルまで落ち込むとの見方を示した。金融機関もシェール向け融資に慎重になっている。
 先物市場では投機筋の取引が集中する期近が急落する場面でも、決済期限の遠い期先の下げは限られている。短期的に下値余地が残るものの、相場の反転を示唆するようなサインも目立ち始めている。