追加緩和の必要性見極め 日銀、30日に決定会合 |
2015/10/28 02:00 日経速報ニュース 1208文字 |
日銀は30日開く金融政策決定会合で経済・物価見通しを下方修正し、物価上昇率2%という政策目標の達成時期を従来の「2016年度前半ごろ」から先送りする。景気と物価を支えるため、追加金融緩和に踏み切るかが最大の焦点となる。日銀は残り少ない緩和カードで最大の効果を得られるように、慎重に緩和の必要性とタイミングを見極める。
日銀は30日の金融政策決定会合で、半年に1度公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめる。新興国経済の減速と原油価格の低下を受け、経済成長率と物価上昇率の見通しをそろって引き下げる。 15年度の生鮮食品を除いた消費者物価指数(CPI)の上昇率は従来予想の0.7%から0%台前半に、16年度は1.9%から小幅に下方修正する。これに伴い、物価2%の達成時期は16年度後半以降に先送りする。 日銀は13年4月に異次元緩和を導入した当初から、2年で2%の物価上昇を実現すると約束してきた。達成時期が16年度後半以降になると、約束の2倍の時間がかかる計算になる。日銀は2%目標の達成のためなら「何でもやる」(幹部)と公言してきただけに、市場では30日の会合での追加緩和観測が強まっている。 実際はどうか。日銀は足元の物価の動きは堅調とみているが、先行きのリスクへの警戒を強めている。生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数の前年比上昇率は1%を超え、原油安の影響を除けば物価は上がっている。ただ、新興国の減速で国内の輸出・生産の低迷が長引けば、企業の高収益が賃上げや個人消費を通じて物価を押し上げていくという好循環の絵が描きにくくなる。 さらに今回の展望リポートで物価2%の達成時期が後ずれすると、企業や家計が物価の上昇を疑い始め、賃上げや消費に及び腰になる可能性もある。日銀内ではせっかく出口が見えてきた脱デフレを確実にするため、先行きのリスクが高まるようであれば、追加緩和に踏み切るべきだとの声が高まりつつある。 問題は、日銀がすでに年間80兆円という大量の国債を購入しており、追加緩和の余地が狭まっていることにある。市場に出回る国債には限りがあるため、日銀が増やせる購入額はせいぜい10兆~20兆円程度とされる。緩和カードは残り少なく「無駄弾の余裕はない」(幹部)のが実態だ。 米金融政策の先行きも不透明さを増しており、仮に米連邦準備理事会(FRB)が利上げを大幅に先送りすれば、円高・ドル安が進みかねない。そうした事態に備え、カードを残しておきたいとの考えもあるようだ。追加緩和に踏み切れば、円安で物価が上がり、家計や中小企業にとっては負担増になりかねない。政府や経済界が望んでいないのに、あえてカードを切る必要はないとの声も根強い。 緩和カードを温存しすぎて後手に回れば、事態を深刻にするリスクもある。日銀は追加緩和の効果と副作用をてんびんにかけつつ、30日の政策決定につなげる。 |