NY金、先物は下げ基調 ファンド手じまい売りか ETF残高は最高

2012/12/05 14:03  日経速報ニュース    1170文字  
 金価格が水準を切り下げている。ニューヨーク市場の金先物(中心限月)は前日に1カ月ぶりの安値を付けた。日本時間5日の時間外取引ではやや持ち直しているものの、なお1トロイオンス1700ドル前後とこのところの安値圏で推移している。一方、売り優勢の先物市場と異なる動きをみせるのが現物市場。金価格連動の上場投資信託(ETF)や金貨(コイン)には買いが集まり、「先物売り・現物買い」の様相が強まっている。
 ドルの代替資産とみなされる金はドルとは反対の動きをしやすいとされてきた。ところが足元ではユーロ高・ドル安が進んでも、金先物は軟調だ。11月28日と12月4日には20ドル超の下落を記録した。
 「期末を控えてファンドの手じまい売りが出たにすぎない」(マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表取締役)というのが大方の見方。先週の急落局面では、ファンドが先物売りを仕掛ける前にプットオプション(売る権利)を買うことで下げ相場に備えていたとも言われている。
 年末になれば金が下がるわけではない。2011年までの過去20年間の12月の月間騰落率をみると、マイナスは8回だけだ。もっとも、先物市場を主な運用対象とするCTA(商品投資顧問)の多くは今年、金融相場全体の値幅が小さかったため、苦戦したとされる。そのなかで利益が上がった数少ない商品である金を売る動きが出ても不思議はない。
 そんな先物市場の動きとは対照的に現物市場では買いが優勢だ。代表的な金ETFである「SPDRゴールド・シェア」の残高は4日時点で1351.24トン。10月末に比べ1%増え、過去最高を更新した。ETF投資家の特徴は「バイ・アンド・ホールド」。つまり金の長期保有を目的としている。
 野村証券の大越龍文シニアエコノミストは「米国の財政問題に片が付けば、世界景気をめぐる不透明感が和らぐ。将来のインフレヘッジの需要が入っているのではないか」と推測する。金の実物需要の拡大は、金貨にも表れている。米国の造幣局によると、米政府が発行する「イーグル金貨」の11月の販売量は13万6500オンス(4種類合計で17万3500枚)。重量では前年同月の3.3倍に達し、10年7月(15万2000オンス)以来の高水準になった。
 「ゴールドバグ」。金相場に強気の投資家やアナリストは、金に群がる虫(bug)になぞらえてこう呼ばれる。中長期的なドル安や新興国を中心にした需要の拡大は金買いの材料となってきた。金の年間騰落率は01年以降ずっとプラス。現在も前年末の1560ドル台を上回っており、ゴールドバグの強気ストーリーは揺らいでいないようにみえる。だが金相場の方向性を決めるファンドの懐具合次第では、強気相場が続くとは簡単には言い切れない。〔日経QUICKニュース