ゴールドマン松井氏:日本株は夏に上昇転換、米経済加速や業績堅調

  5月31日(ブルームバーグ):ゴールドマン・サックス証券のチーフストラテジスト、キャシー・松井氏は日本株について、早ければ夏ごろにも上昇基調に転換し、TOPIXがことし終盤に900ポイントを回復するとみている。米国経済の再加速や、国内企業業績の堅調な伸びを見込んでいることが主な理由だ。
松井氏がこのほど、ブルームバーグとのインタビューでこうした見解を示した。欧州情勢の混迷や中国の成長鈍化などを背景に、短期的には日本株に対し慎重な見方を示すものの、中期的な強気見通しは変わらないと強調。6カ月先のTOPIX目標水準を900、12カ月先は970と予想している。TOPIXの30日終値は723.62。
日本株市場を20年以上調査してきた松井氏は、「最終的に日本株市場を左右するのは米国経済だ。日本国内の状況がどうあれ、米国経済が堅調なら日本株は上昇する」と指摘。家計のバランスシートの悪化など、米国が抱える多くの構造的な問題は解決し始めており、「経済指標の改善でマーケットの霧が晴れ、市場も上昇に転じる」と読む。
欧州情勢の落ち着きや米経済の回復、2月中旬の日本銀行の追加金融緩和などを材料に、TOPIXはことし1-3月期に17%上昇し、2009年4-6月期以来の高い上昇率を記録した。しかしその後、中国の成長率鈍化やギリシャのユーロ離脱懸念などから下落基調に転じ、第1四半期の上昇分をほぼ相殺した。
米住宅はゆっくり確実に改善
米経済指標は雇用関連を中心に足元で改善ペースが鈍り、4月以降の株価急落の一因となっている。非農業部門雇用者数の伸びは1月に27万5000人増まで拡大したが、4月は11万5000人増まで鈍化。米統計の実際の数値とエコノミスト予想との差異を示すシティグループ経済サプライズ指数は、5月に入りマイナスに転じ、統計内容が市場の想定ラインを下回ってきている。
ただ松井氏は、米経済が夏ごろにも再加速すると予想。特に住宅市場に関しては「底打ちした。ゆっくりだが、確実に改善している」と分析した。米中古住宅販売数が10年7月の339万件を底に、ことし4月には462万件まで回復してきている。
いったん日本株が上昇に転じれば、国内企業の堅調な収益や株価の割安感などが正当に評価され始めると松井氏。ゴールドマン証では、東証1部企業の連結純利益は13年3月期で前期比49%増、14年3月期で同15%増を想定。主要なアジア新興国を含め、カバーする市場の中で日本は最も増益率が大きいという。会社側の今期計画は保守的で、世界経済の見通し改善や円安進行の可能性から上振れる可能性は高く、「7月から8月に発表される第1四半期決算の内容を見て、投資家は企業業績について確信を強めるだろう」と、同氏は話す。
中期注目は自動車や銀行、短期は収益とBS重視
一方、ブルームバーグ・データによると、30日時点の東証1部の株価純資産倍率(PBR)は実績ベースで0.84倍、今期の予想株価収益率(PER)は12倍で「08年も割安だったが、また割安感が強まっている」と松井氏は指摘。ただ、かつて世界をリードした電機セクターの競争力低下も低バリュエーションの一因で、今後バリュエーションが割高に振れる可能性は縮小しているとも見る。
同証では、中期的には自動車銀行運輸、メディア、食品セクターを「オーバーウエート」判断とし、自動車に関しては昨年の東日本大震災やタイ洪水などから復活し、コスト削減やアジアでの販売成長などから、大手8社の今期営業利益が前期比2倍以上になると予想。銀行については、アジアのローン市場の拡大などを背景とした海外向け貸し出しの増加を受け、収益性の改善を見込む。
短期的には「シクリカル、ディフェンシブ一辺倒ではない」戦略が望ましいとする松井氏は、収益見通しが良く、バランスシートが健全な銘柄がアウトパフォームすると予想。前期収益や今期計画が市場予想を上回り、負債株主資本率が100%未満などを条件に選別した結果、JT京セラダイキン工業、リコーなどに注目するとした。