ユーロ買い先行、支援合意派優勢でギリシャのユーロ離脱懸念緩和

  5月28日(ブルームバーグ):日本時間朝の外国為替市場では、ユーロが対ドルで前週末に付けた2010年7月以来の安値から水準を切り上げて推移している。週末発表されたギリシャの世論調査で同国向け支援合意を支持する政党の優勢が示され、ギリシャがユーロ離脱に追い込まれるとの懸念が和らいでいる。
一方、前週末にはスペインのカタルーニャ州政府の財政懸念が浮上したほか、米格付け会社が同国の銀行の格下げを発表。スペインの財政・金融不安が高まる中、ユーロの上値は限定的となっている。
午前8時22分現在のユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.2575ドル前後。前週末には一時、1.2500ドルを割り込み、10年7月6日以来の水準となる1.2496ドルまでユーロ安が進んだが、週明け早朝の取引ではユーロ買いが先行し、一時1.2580ドルを付ける場面が見られている。
IGマーケッツ証券の為替担当アナリスト、石川順一氏は、市場はギリシャのユーロ離脱による「国債のこげつきと、企業に対する倒産リスクがフランスを中心とした欧州金融機関に飛び火するという連鎖」を今一番恐れているとし、「反緊縮派が勢いを失速する兆候が見られれば今までたまっていたユーロショート(売り持ち)のカバーが入ってもおかしくない」と指摘。ただ、「リスクオフの流れを完璧に変える力はまだない」とし、ユーロやリスク通貨の買い戻しは「明らかに短期的な状況」と見ている。
ユーロ・円相場も週明けの取引では1ユーロ=100円台を回復し、一時100円26銭までユーロ買いが進行。その後はもみ合いとなり、同時刻現在は100円14銭前後となっている。
一方、ドル・円相場は1ドル=79円台でもみ合う展開が続いており、早朝の取引では79円73銭を付けた後、79円55銭までドルが軟化。足元では79円63銭前後で推移している。
支援合意支持派が首位
ギリシャで6月17日に実施される再選挙を控えて26日公表された6つの世論調査で、同国向けの支援合意を支持する新民主主義党(ND)の支持率が、金融支援の実施に反対する急進左派連合(SYRIZA)を抑えて首位になったことが明らかになった。
NDのサマラス党首は、同国が国際的な金融支援の条件を順守せずに一方的に破った場合、財政が破綻してユーロ圏から離脱、「ギリシャは制御不能の破綻に陥り、生活水準は現在の4分の1に下がるだろう」と警告した。
また、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のベニゼロス党首は、国際社会との金融支援の合意条件を見直す考えは欧州域内で受け入れられつつあり、同プログラムは2017年に延長される可能性があるとも述べた。6つの世論調査で、支援を賛成する政党としてNDに次ぐ議席を保有するPASOKの支持率は3位。
スペイン不安
スペインのカタルーニャ州政府のアルトゥール・マス知事は25日、マドリードでの記者会見で、中央政府が州政府の資金調達市場へのアクセスを支援することを重ねて訴えた。
一方、スペイン政府が今月初めに国有化した同国銀行3位のバンキア・グループは、不動産融資とそれ以外の融資の引当金を準備するため、190億ユーロ(約1兆9000億円)の公的資金による追加支援を申請する。
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は25日、スペインの銀行バンキア、ポプラール・エスパニョール銀行、バンクインターの信用格付けをジャンク級(投機的水準)に引き下げたことを発表した。スペインの景気悪化を理由に挙げている。
25日の米国株相場は下落。5月のロイター・ミシガン大学消費者マインド指数(改定値)が2007年以来の高水準に上昇したものの、スペインの財政事情をめぐる懸念が高まったことから売りが優勢となり、S&P500種株価指数は5日ぶりに下げた。
アイルランド国民投票、米雇用統計
欧州では今週、31日に欧州連合(EU)の新財政協定への参加をめぐるアイルランドの国民投票が行われる。財政協定への参加が否決された場合、債務危機の対象には歳出削減が不可欠だと主張するドイツ主導の勢力にとってさらなる打撃となる。
アイルランド紙アイリッシュ・タイムズは、アイルランドの国民投票が行われる前の段階でも投票が終了した後も、ドイツは協定の内容修正に応じる考えはないと、ドイツのザイベルト首相報道官の発言を引用して報じた。
一方、米国では週末にかけて5月の雇用統計やISM(米供給管理協会)製造業景況指数といった主要経済指標の発表が予定されている。