海外勢、東電株に「逆張り」 震災直後に相次ぎ買い増し(本日朝刊日経)

 原子力発電所の事故で株価が急落した東京電力株を海外の大手運用会社の一角が買い増していたことが専門調査会社の調べで分かった。米系のフィデリティやブラックロックなどが3月末から4月末にかけて東電株の保有比率を引き上げたもよう。国内勢を中心に投資家が売却を急ぐ中、東電株を割安と判断して海外運用会社が「逆張り投資」に動いた可能性がある。
 これは、米調査会社のトムソン・ロイターの調査で判明した。運用各社が公表している運用報告書などに基づき、昨年12月末時点と、原発事故の発生後である3月末時点(一部の運用会社は4月末時点)の東電株の保有状況を比較した。
 米大手運用会社のフィデリティは13万株しか保有していなかった東電株を3月末時点で183万株と13.5倍に積み増した。フィデリティは企業の個別調査に基づき割安株や成長株を組み入れる「アクティブ運用」の代表格。同社は「個別株の投資判断については一切コメントできない」としているが、震災後の急落局面で割安感から大量の買いを入れた可能性がある。
 株価指数(インデックス)に連動する投資信託を手掛ける運用会社の保有株数の引き上げも目立った。ブラックロックは米国拠点と英国拠点の合計で1374万株と19%増え、米バンガードも893万株と5%増えた。
 このほか、東電が公表した3月末時点の大株主上位10社には、日本の生命保険会社やメガバンクなどに交じって、8位に「OD05 OMNIBUS」という名義の株主が登場。保有株数は2408万株で昨年9月末より4割近く増えた。「OD05」は機関投資家の持ち株を管理しているカストディー(信託会社)の名義。実際の資金の出し手は中国政府系ファンドではないかとの見方が市場関係者の間で有力だ。