テレビを見る人にとっては鈴木光といえば、即座にわかるだろう。TBSの人気番組東大王で、インテリ芸能人と言われる知性派の芸能人を次々と打ち負かす。この番組はたまにはみるが、クイズにそれほど興味があるわけではないので、すぐに、チャンネルを変えてしまうことが多い。それでも、美人が集まる芸能界のTV番組においても美しさが際立つ鈴木光は印象的だ。名前は、この日のプレバト、俳句の査定ランキングに登場するまでは知らなかった。

 

この日は,同じTBSの番組、プレバトに、番組対抗戦で東大王からの代表ということで、その鈴木光を登場させた。鈴木の作った俳句に対して、ベテランの芸人たちがやたらと褒めちぎった。芸達者で笑いをとり人を喜ばすことが得意な面々がこれだけ揃って持ち上げると、何らかの作為を感じてしまう。

 

しかし、その俳句の見事さには、視聴者である自分も、ただただ驚いてしまった。あまり手慣れていないと言う意味で、下手くそといえば下手くそだが、俳句というものの本質的な美しさでは非凡なきらめきをギラリとみせた。

 

番組を作る側からすれば要するに鈴木光をこの番組に引っ張り出したいのだろう。エンターテイナーは、十分に揃えたが、なにせ美人がいない。番組としては一定限の俳句の技量を持った美人がどうしてもほしいだろう。俳句のうまい女性はときに出てくるが、技量は今ひとつで年齢がややオーバーだったり花という役割は果たせない人はいることはいる。しかし、鈴木光はおそらく20。20歳という若さ。芸能人と一緒に並べても見劣りしない美貌。プレバトとしても絶対に逃したくない素材だろう。

 

どうも、仕組んでいるなとさえ感じる。建前としてはどういう俳句を作ってくるかは、その場で初めて明かされる。ことになっている。そうかもしれない。しかし、場の空気をコントロールすることに長けた芸人がこれくらい集まれば、言わず語らずに番組制作者の意図を一瞬で察知し、その場で、鈴木光を番組に引っ張り込む空気を作ってしまうことなど、朝飯前だろう。

 

 

要するに鈴木光の句が素晴らしいとみんなで感心し、うまいうまいと持ち上げた。番組が終わってから、鈴木にもう一回出てくれと呼び出し、あとはずるずるとレギュラーメンバーに引きずり込みたいのだろう。

 

確かに、鈴木光がこの番組に準レギュラーのように出演すれば、おそらく人気は一段と上がり、視聴率も上がるのは間違いない。この番組を楽しみに見ている人たちはみんな喜ぶだろう。

 

 

鈴木光が作った句は

 

賽銭の音や

初鳩青空へ

 

 

俳句というものを作りだして間もないらしく、俳句言葉に慣れていないし、俳句を読み慣れた人には、不器用だなという違和感もあり、いかにも初心者という素人臭さも感じる。こちらは、俳句に造詣が深いわけでもないからよくはわからない。

 

しかし、この句から響いてくる音は、あまりに印象的だ。このプレバトメンバーで俳句を作る上級者連中は、この句を聞くと一様に絶句した。あまりの見事さに驚くほかはなかったのだろう。

 

 

 

 

初鳩ということばから、正月の神社の場面が浮かぶ、賽銭の音が響くところから、人はほとんどいない。朝が早いのか、あるいは、初詣に多くの人が集まり賑わうような中心的な神社ではなく、地元の人が三々五々集まるような小さな神社なのだろう。ポーンと投げた賽銭の音が聞こえるのだから、人がほとんどいない神社だ。その賽銭の音に反応して、数羽の鳩がさっと羽ばたき、青空へと舞い上がる。静かさ、賽銭を投げる音、鳩の飛び立つ音。この一瞬の音が句の全体に響き渡る。細かいところを見れば、手慣れていない人の作品だが、その才能を十分に感じさせる。

 

普通、初心の場合、5・7・5という標準形の俳句を作る。

 

しかし、5プラス3、4プラス5の破調。

中7を3と4に分けたような形だが、評価をする夏井いつきは、型の力を理解しているとしか思えない、という。

この言葉の意味は、破調の力を理解し使いこなすには、普通、相当数の句を作らなければ、そこまでの使いこなす力はついてこないはずだが。だから、こんな初心のものが、それを理解できるはずはないのだが、という、これも驚きだろう。

 

 

誰しもが、鈴木光に俳句をもっと作ってみせて欲しいと願うだろう。本人は弁護士になる気持ちのようだから、そろそろ、司法試験の勉強に取り掛かる時期。テレビに出るのも控えていくだろう。しかし、俳句をある程度本気で学べば、短歌の俵万智のような位置に立つかもしれない。

 

その上にあの美貌だ。番組担当者は、番組に純レギュラーで出演させるのに必死になるだろう。

 

 

あの東大王チームというのは、どういうふうに作られたのかはしらない。ネットの情報によると、高校生クイズのチャンピオンとか、番組に登場してトーナメントを勝ち抜いてクイズ王になった経験がある人たちらしい。このチームは、クイズで出される問題について予測するかなど、クイズに関連した知識、ノウハウの収集に熱心なようだが、それにしても、知識の広さ、深さには驚かされる。