親のための10の心得
IDA SOCCER NIGHT SCIENCE 父母の役割
最後に、私が静学の親御さんのために記した心得を紹介します。学校やクラブチームによって状況は異なるでしょうが、参考にはなれば幸いです。
一、静学のゲームやトレーニングを時間をつくって見に行くこと。
(子どもはそれを望んでいます)
二、静学のゲームやトレーニングでは全部の子どもを応援すること。
(誰だって、自分の子が一番可愛いけれど……)
三、チームや選手の調子の良い時だけでなく、悪いときにも勇気づけてやること。
(批判をするな)
四、監督・コーチ・先生・スタッフを尊敬し尊重すること。
(彼らに任せましょう。判断に圧力をかけるな)
五、いつもレフリーはインストラクターとみなすこと。
(判定の批判をしない)
六、選手たちがサッカーをやることを楽しむように刺激し勇気づけること。
(プレッシャーにならないように)
七、試合が終わったら家族で楽しかったか厳しかったか話し合うこと。
(結果を聞くだけで終わるな)
八、サッカーをやるのに快適な節度のある用具を準備すること。
(大げさにならない)
九、静学サッカーのポリシー・理念・方針を理解し協力する。
(親子のだんらんを持ち、どのような態度で練習に臨むか話しあう)
十、忘れないでください。サッカーを通して夢の実現や人間形成をするのは、あなたの子ども自身です。
(親のあなたではありません)
中学生の育成について
最後に中学生の育成について、私が静岡学園中学校で指導している内容についてお話しします。
この育成世代の子どもたちが、親にとって誇らしく輝くのはもっと成長した年代、高校を巣立つ時、もしくはもう少し先になります。勝負はこの年代ではありません。
これまで静学からプロのサッカー選手になった者は何十人もいますが、彼らはこの育成年代の時には決して特別な選手ではありませんでした。彼らの中学入学時には、それぞれの良さはあったものの、全体的にはどこにでもいると思える選手でした。中学の時代から才能が顕在化していたわけではないのです。
一人ひとりの可能性は少年時の身長、足の速さ、筋力だけで測られるものではありません。多くの少年はそれぞれにほかの人には負けない特徴があります。俊敏さ、柔らかさ、賢さ、まじめさ、もちろん体の大きさやスピードもその中の一つです。しかし、少年時の環境や成長が遅いため、注目されずにいる子どもたちも山ほどいます。
静学では、中学生の時から六年間、継続して厳しい練習で、ドリブルなど個の特徴に特化し、高校年代で全国でもトップレベルのテクニック(技術)とインテリジェンス(賢さ)あふれる、他のチームにはいない特別な選手へと成長することを目標としています。
留意していただきたいのは、中学年代では足の速さ、体の大きさ、ロングボールなど、短絡した「勝利だけに偏る指導」は一切していないということです。
人の育成は、野菜の促成栽培のようにはいきません。「箸を扱うようにボールを扱う」という徹底した個人技の習得にこだわり、継続します。将来失うことのない財産となる「テクニックの特化」に大切な育成期の多くをあてています。