借り物の人生

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「人と生まれ出たるうへは
必ず死する物と覚悟する時は
一日活きれば即ち一日の儲け
一年活きれば一年の益なり
故に本来わが身もなき物
わが家もなき物と覚悟すれば
跡は百事百般みな儲けなり」

 

(略解)

元来わが身わが家も
わが身わが家でなく
期限つきの借りものと覚悟すれば
すべてのものごとは
思わぬ儲けものの連続ということになる
 
自分の身体は自分のもの
と誰もが思っている


もしそうであるなら
死はやってこないことになる

なぜなら、この人生が終わったときには
この身体はお返ししなければならないからだ

 

本でも、車でも、洋服でも
自分で買った自分のものなら
誰かに返す必要はない

しかし、この世を去るときには
何ひとつあの世に持っていくことはできない

つまり、どんなに高価な宝石であろうと
ほんのつかのまの借り物、ということ

 

室町時代の閑吟集(かんぎんしゅう)に
 こんな歌がある


「夢の夢の夢の世を うつつ顔して
何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ」


(夢のようなこの世を、わけ知り顔をして
真面目くさってつまらなそうに
生きたところで何になる
この一生は夢
ただ狂え)

 

狂えとは、遊んで暮らせということではない
常軌を逸(いっ)した行動
狂ったように集中した生き方、ということ
身体も、お金も、物も、すべて借り物
だからこそ
大事に使わせていただかなければならない

そして、つかのまの人生
だからこそ
狂ったように真剣に生きなければならない
今生きていることは儲けものの人生

 

『二宮尊徳一日一言』致知出版社より