ならぬことはならぬものですⅡ

 

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2013.02.02

 

福岡教育大学名誉教授の横山正幸先生は、シルクロードの国々やトルコの子どもたちを対象に「3つだけ願いが叶うとしたら、どんなお願いをしますか?」というインタビュー調査を行ったそうだ。

 

ある中学二年生の男の子はこう答えた。

「1.お父さん、お母さんがいつまでも健康で長生きすること
2.自分も健康であること
3.今の勉強がずっと続けられること」

 

別の14歳の女の子はこう答えた。

「1.お父さん、お母さんは苦労しながら私をここまで育ててくれました。早く大人になって日々の生活を心配しないで暮らしていけるよう楽をさせてあげたい
2.お母さんのために1つでもいいから電化製品を買ってあげたい
3.小学校の先生になって子どもたちのためにいい教育をしてやりたい」

 

こうした子どもは特別ではなく、どの子の答えにも必ず「母さん」が入っている。

 

では、日本はどうかと気になって、福岡県北九州市のある小学校でアンケート調査を行ってみた。

その回答の上位は「お金」「テレビゲーム」「ゲームのソフト」「眠りたい」「何もいらない」

誰1人として「母さん」という回答が出てこなかったそうだ。

 

社会心理学者の中里至正先生は、日本、中国、韓国、トルコ、アメリカ、ポーランド、キプロスの世界七ヵ国の中高生約6000人を対象に、青少年の非行的態度等について、アンケート調査を実施した。

 

その調査項目の1つは「お母さんを尊敬しているか。お母さんのようになりたいか」

「はい」と回答した割合は、アメリカ94.5%、中国97.9%、韓国70.5%、トルコ97%、キプロス97%、ポーランド97.3%であった。

日本は、わずか48.5%であった。

 

横山先生はこう分析する。

「日本のお母さんは本当に優しい。
着るもの、食べるもの、おもちゃ、お小遣いも十分に与える。
レストランにも行くし、遊園地にも連れて行く。
当然、子どもは嬉しくて喜びます。


しかし、それが繰り返されると『母さんの優しさがそれをしてくれている』のではなくて、子どもの中で『お金がそれをしてくれている』に置き換えられる」

そして、欲しいものを何でも与えてもらう子どもは、感謝の気持ち、それを手に入れようとする意欲、それを手に入れたときの感動を無くしていくという。

生きることそのものへの迫力も失ってしまうという。

 

ルソーの『エミール』

教育を志す人なら、誰もが読む本だ。

その中の一節である。

「あなたは、あなたの子どもをダメにする最も確実な方法をご存知だろうか。
それは欲しがるものをなんでも与えてあげることです。
子どもは確実にダメになってくれることでしょう」

 

そういえば、小さい頃、母親からよく「ガマン」と言われていた。

今考えれば、そのとき欲しかったものは、数十円、数百円程度のものだから、家計が苦しくて我慢させられていたのではないだろう。

教育だったのだ。

 

子どもにとって我慢すべきときに我慢できる力は重要である。

子どもの健全な発達と心豊かな生活を可能にする最も重要な心の能力の1つなのである。

 

 


もちろん家庭の教育・家族のありかた、家族の崩壊の影響は大きいだろう。

だが現状を考えるとそれだけで説明するのは難しい。

やはり結論は、

親になる大人が道徳教育を満足に受けてこないこと、

もっぱら国の教育指針の歪みに起因する。