〈評判がいい時、勝てない訳〉
評判がいい時は勝てないものだと、 井田はよく言う。
そしてオシムも同じことを本に書いていた。
評判なんてとんでもない。
そもそも、 強いなど「勘違い」している輩(やから)が チームに一人でもいるなら、 県予選など絶対に勝ち抜けはしない。
全国大会の事を、夢想することは、
ありもしない評判に浮かれ、
誇張された自意識が心を乱し、
対戦相手への卑下が挑戦心を喪失させ、
勝利の過程を見失わせる。
まだまだ日々やることが、
足りない事が目の前にメチャクチャある。
結局、 それが見えているか否かなんだ。
玄関の靴は揃えてあるか?
小便器はピカピカか?
本は今何読んでいる?
授業は今日もしっかり勝負してきたか?
くすんだ空気で、 足元がスッカスカで、
一番大切な試合になれば 挑む気持ちで、
挑戦心溢れる相手に 飲み込まれていく。
すぐ先にある負けを、 直視し、
研ぎ澄ませば 簡単に見える落とし穴。
それを 見過ごし、
先の自分の居所を覚悟できていない選手は、
絶望的な結果が、
突如襲ってきてはじめて、
置かれた事態と 自分の浮かれ具合を、
はっきりと 自覚出来るものだ。
噂と自分の評価が気になる男に
勝負はできない、
そして、最後に栄光は輝かない。
2009.111
