消える「未知との遭遇」
2014/4/23[スポーツの熱源]日本経済新聞 イメージ 1 3月23日付の英インディペンデント日曜版によると、イングランド人以外の100人以上のプレミアリーグ所属選手が、6~7月のワールドカップ(W杯)ブラジル大会に出場しそうだという。
 ベルギー、フランス、米国代表が11人と最多で10人のスペインが続く。プレミアリーグに代表候補がいないのはロシアだけ。全20クラブから代表が選ばれる見込みだ。
 それだけプレミアリーグの国際化が進んでいる。たとえば3月30日のアーセナル―マンチェスター・シティー戦の先発メンバーを見ると、イングランド人は計2人しかいなかった。
 W杯を待たずとも、日常的に国際色豊かな試合が行われ、このトップ選手の競演が毎週、200カ国以上でテレビ中継されている。ほかにもドイツやスペインの国内リーグや欧州チャンピオンズリーグ(CL)が国境を越えてテレビで楽しまれている。つまり、世界の熱心なファンはW杯に出場する主要選手の顔やプレーの特徴を事前につかんでいる。
 インディペンデント日曜版は「いまだったらロジェ・ミラのダンスは欧州CLで日常的にファンの目にさらされている」と書く。ロジェ・ミラとは1990年W杯イタリア大会で旋風を巻き起こしたカメルーンのFW。プレーとともにゴール後の歓喜のダンスが強烈な印象を残した。
 それは、この規格外のFWを発見済みのファンがごく一部だったから。時を経て、今や世界の有力選手に関する文字と映像による情報がちまたにあふれている。それはうれしいことであるような、ないような……。4年に1度のサッカーの祭典は「未知との遭遇」の場ではなくなり、ロジェ・ミラを目にしたときのように「なんじゃ、これは」と腰が抜けそうになることはほとんどなくなっている。
(吉田誠一)