この方はピラミッドと対峙した
これまでと異なる自分づくり
男はピラミッドを眺めていた。地平線に輝く真っ赤な夕日が、ピラミッドの鋭角のシルエットを砂漠の上に黒く映し出していた。その見事な景色に感動を覚えながら自分を冷静に振り返っていた。 それは経営者としての器のことである。ここ数年間経営が上手くいかず悩んでいた。幾つかの経営セミナーに参加したが、短期的に業績を上げるノウハウは見つからなかった。当然のことだ、といまさらながら自分の努力不足と安易にハウツーを求める姿勢に情けなさを感じていた。
男は飽くことなく砂漠を眺め続けていた。茶褐色の色彩で覆われた無毛の地が果てしなく続いている。時たま強風が砂塵を舞い上げている。自分の心の状態は砂漠の不毛地帯そのものだと感じていた。
ここ十年の経営では、思いとは逆に社員の心の荒廃が進んでいる。経営を立て直すには社長自身の革命が不可欠であり、それには自分の心を緑化してオアシスにすることだと気づいていた。
日本を離れ異国の地に足を踏み入れてみると、不思議と冷静になり客観的に物事が見え始めていた。
男は「耕心」という言葉を何度も眩いていた。
最大級といわれるクフ王のピラミッドは、二百三十万もの石が積み上げられてできているという。それも、一つの石が二.五トンもある。紀元前二六〇〇年に建築されたと歴史書には記されている。現在から遡ると四千六百年も前のことである。当時の建造技術からして想像を絶する困難を伴った一大事業である。完成まで十万人の労働者を使い、二十年という歳月を費やして造り上げたといわれている。
男は飽くことなく砂漠を眺め続けていた。茶褐色の色彩で覆われた無毛の地が果てしなく続いている。時たま強風が砂塵を舞い上げている。自分の心の状態は砂漠の不毛地帯そのものだと感じていた。
ここ十年の経営では、思いとは逆に社員の心の荒廃が進んでいる。経営を立て直すには社長自身の革命が不可欠であり、それには自分の心を緑化してオアシスにすることだと気づいていた。
日本を離れ異国の地に足を踏み入れてみると、不思議と冷静になり客観的に物事が見え始めていた。
男は「耕心」という言葉を何度も眩いていた。
最大級といわれるクフ王のピラミッドは、二百三十万もの石が積み上げられてできているという。それも、一つの石が二.五トンもある。紀元前二六〇〇年に建築されたと歴史書には記されている。現在から遡ると四千六百年も前のことである。当時の建造技術からして想像を絶する困難を伴った一大事業である。完成まで十万人の労働者を使い、二十年という歳月を費やして造り上げたといわれている。
・ピラミッドの見事な姿と信じられない「大きさ」
・ピラミッドを造り上げた智慧と実現力の「深さ」
・建造されてから現在までの悠久の時間の「長さ」
・ピラミッドのある砂漠の大劇場の無限の「広さ」
・ピラミッドを造り上げた智慧と実現力の「深さ」
・建造されてから現在までの悠久の時間の「長さ」
・ピラミッドのある砂漠の大劇場の無限の「広さ」
数千年という時間軸の中で、時代を超えて聳え立っている。風雨にさらされても黙然としている。神々しい朝日、美しい夕日の中でも、驕ることなく淡々として表情を変えない。星座が嬉々として光り輝く漆黒の夜でも一人静かに鎮座している。ピラミッドは生き方のシンボルだと思った。
これからの人生の目標は大きな心を持つ器づくりにある。残りのビジネス人生も長くない。いままでとまったく異なる自分づくりの修行をしたい。自分を変えるには二百三十万の巨石を飲み込むことだと思った。
ほろ苦いエジプトコーヒーを舌の上で転がしながら、自分の腹の中にピラミッドがズシーンと納まる姿を想像していた。
これからの人生の目標は大きな心を持つ器づくりにある。残りのビジネス人生も長くない。いままでとまったく異なる自分づくりの修行をしたい。自分を変えるには二百三十万の巨石を飲み込むことだと思った。
ほろ苦いエジプトコーヒーを舌の上で転がしながら、自分の腹の中にピラミッドがズシーンと納まる姿を想像していた。
・存在感が大きい
・自然体である
・泰然としている
・器が大きい
・尺度が違う
・戦わずして勝つ
・時間軸を見抜いている
・自然体である
・泰然としている
・器が大きい
・尺度が違う
・戦わずして勝つ
・時間軸を見抜いている
聳え立つ巨大な実物を目のあたりにすると、自分の小さなモノサシを超えて人類の歴史、自然の雄大さ、人間の叡智という尺度で物事を見る必要性を痛感していた。そして、男はペンを執り、ある文字をノートに書き込んだ。そこには、
「一千倍に挑戦!」
「ピラミッドを飲み込むほどの器づくり」
「新しい自分流モノサシと尺度」
と大きな文字が踊っていた。
「一千倍に挑戦!」
「ピラミッドを飲み込むほどの器づくり」
「新しい自分流モノサシと尺度」
と大きな文字が踊っていた。