
レイはかつてソラが冒険した世界、オリンポ スコロシアムに来ていた。回りには、ギリ シャ神話を思わせる建物が沢山並んでいた。 レイは先程までのワンダーランドの冒険での 疲れを癒すため、近くにあった宿に泊まる事 にした。
宿の部屋にあるベッドに寝転がり、よっぽど 疲れていたのか、すぐに眠りに落ちてしまっ た。
レイはこの時、とある夢を見ていた。それは 今から10年ほど前の夢。レイがまだアース にいた頃、レイと、レイの幼馴染みの少女が 浜辺で遊んでいた時だった。
レイ君待ってよー!
ははっ、遅いよ………!
待ってよー!
この時何故か少女の名前だけが聞き取れな かった。あのときの事は覚えていた。二人で おいかけっこをしていたのだ。レイが逃げる 方で、少女が追いかける方。
少女はなんとかレイに追い付いた。疲れたの か、息を切らしている。その様子を見たレイ は試しに1度、夢について少女に聞いてみ た。
ねぇ、………には夢ってある?
夢?う~ん、今の所はないかな。レイ君は?
俺はみんなを守れるくらいに強くなること!
ふーん、そっか!私、応援するね!
その時だった。少女の背後に謎の黒い影が 迫ってきているのにレイは気が付いた。
………!危ない!
え?!!
………!
少女が気付いた時はもう遅かった。少女はそ の影に飲み込まれてしまったのだ。
………?………!………ーーーーーーー!!
それ以来、少女は帰ってこなかった。
その当時の夢を見て、レイは酷く魘されてい た。まるで嫌な事を一辺に思い出すかのよう に………!
「っ!」
レイは先程の夢で酷く魘され、突然パッと目 が覚めた。窓から外を見ると、まだ夜が明け てない。時計を見てみてもまだ3時である。 レイは額に違和感を感じ、額に手を当ててみ ると、自分でも驚くほどの大量な汗をかいて いた。
「えっ………?」
そして何故か涙まで流れてきた。泣きたくな いのに何故か流れてくる。どれだけ涙を拭っ ても、どんどん流れてくる。昨日の夢とい い、今さっきの夢といい、最近は不思議な現 象ばかり起こる。
午前7時。レイは闘技大会が開かれるという コロシアムの方に向かった。だが、コロシア ムへの階段が妙に長く、そろそろへばってき た。
「あと、どのくらいかな……?」
レイが息を切らしながらその言葉を吐き捨て るように言った。しかもここ、何気に空の上 にある。オマケに道のりはまだまだ長い。
「長いよぉーーーーーーーっ!!」
思わずレイはそう叫んだ。
やっとの思いでコロシアムに着いたレイ。ゼ エゼエと息を切らしている。現在午前8時。 階段だけで一時間はかかった。とその時だっ た。コロシアムから歓声が上がったのだ。急 いでコロシアムへと走る。
《今大会優勝は、ヘラクレス だぁーーーっ!!》
ハーク!ハーク!ハーク!
観客が今大会優勝者であり、英雄であるヘラ クレスの愛称、ハークを連呼する。ヘラクレ スは観客に手を振りながら去っていった。そ の様子を見たレイは、1つの疑問を抱いた。
戦う意味って、何だろう……?
俺は、大切な人を探すために外の世界に来た けど、戦う意味は、わからない………。
レイはヘラクレスの戦いを見て、戦いの意味 について考えていた。旅の意味はあるが、戦 う意味は無かった。一体自分は何のために 戦っているのか?そう悩んだ末に、レイは決 めた。
「何?特訓を受けたいだと?」
ヘラクレスの師匠であり、小さい山羊の人形 のような見た目のフィルがレイに聞く。レイ は戦いの意味を見つける為、特訓を受ける事 に決めたのだ。
「はい!」
迷いのない声でレイが答える。
「止めておけ。お前さん見たいな子供じゃ あ……、」
ジャキィン
レイがキーブレードを出して見せた。
「なるほど。お前さんなかなかやるようだ な。」
「まぁね。」
レイが笑顔で答える。その表情から持ってい る武器まで、過去に特訓させた英雄のタマゴ であるソラ達にレイが似ていたのか、フィル はレイを気に入り、特訓を受けさせる事にし た。
「良いだろう。ただし、口答えは一切許さん ぞ!」
「はい!」
レイはしっかりと大きい声で返事をした。特 訓に移る前に、フィルがレイに心得を言う。
「良いか?心得は二言!」
レイが息を飲む。
「特訓は、」
「いつでも、」
「本気でやれ!」
そう言ってフィルは特訓場所に行く。レイは 先程のフィルの言葉に少し疑問を持った。
「(二言じゃ無くない?)」
とにかくレイはフィルの後を追って、特訓場 所へと足を踏み入れた。すると太陽の眩しい 光がレイに降り注ぐ。火傷しそうだ。それほ ど暑いのだ。レイの額から汗が軌跡を描くよ うにして垂れる。
「よし、頑張ろう!」
レイはフィルの特訓メニューに挑む………!
「はあぁぁぁ!!」
レイはフィルが用意した特訓用のバトルロイ ドに攻撃を仕掛ける。その攻撃は見事にバト ルロイドの頭に直撃した。背後からもバトル ロイドが数体襲って来るが、レイはそれを軽 くいなして見せた。
「……中々出来るやつだな……。」
フィルが特訓熱心なレイを見守る。フィルは かつて軟弱だったヘラクレスの一生懸命努力 する姿をレイに重ねて見ているのだろう。
「そこだ!」
キーブレードを槍のようにバトルロイドの腹 を突く。見事に貫いた。バトルロイドの一体 一体は弱いのだが、数が多いため体力の消耗 が激しい。
「くっ……………!」
流石にレイも体力が限界のようだ。ゼエゼエ と息を切らしている。しかもこの夏の暑さ で、レイの身体の水分が残り少ない状況だ。 頬の辺りにまで垂れてきた汗を舌で嘗めるレ イ。バトルロイドの群れに突っ込み、攻撃を 連発した。
「これなら、行ける!もっと、力を【解放 (リベレイト)】するんだ!俺!!」
レイは乗ってきたのか、夏の暑さを一切感じ なくなり、その持てる力全てを解放出来る気 がした。そして、バトルロイド達を見事に殲 滅させた………。
レイはフィルに頼んで、特訓メニューを汗水 垂らして見事にこなした。自分へのご褒美と して、スポーツドリンクを大量に購入し、今 ガブガブ飲んでいる最中である。
「凄いな………。あの頃のハークそっくり だ。」
「え?」
ハーク。つまりヘラクレスにそっくりという フィルの言葉に少し疑問を持ったレイはフィ ルに聞いてみた。
「何が似てるの?」
するとフィルが昔の事を思い出しながら、
「ハークのやつは昔はお前さん見たいに本当 の強さとか戦う意味とかに関して悩んでい た。でも、ただひたすらに努力して強くなっ たらそんな悩みなんて無くなった。」 「………。」
「お前さん、何か悩んでいると見た。」 「!!」
自分の心を覗かれたような不思議な気分にな り、少し恥ずかしく感じるレイ。
「だが、あえて聞かん。そう言うのは、自分 で見つけて、自分で解決するもんだ。良い か?基本は二言!」
「いっぱい、」
「努力して、」
「強くなれ!」
フィルの応援を受けて、勇気が出たのか、少 し笑うレイ。
「何が可笑しい?」
フィルがレイの幸せそうな笑顔を見て言う。 レイは笑いながら答える。
「だって、二言じゃ無いよそれ!」
「なにぃ!」
そうして、この日は二人の笑い声が夜中に響 いた。とても幸せそうな笑い声が。
レイはこの特訓を得て、また1つ強くなれ た。朝になった頃には既にレイの姿はオリン ポスコロシアムには無く、何も言わずに再び レイは旅立った………!真の英雄を目指し て………!
