冗句157
◆送料込み
「それで、送料はおいくら?」
「放送でご案内した通り、無料です」
「無料って、だれが負担するの。まさか、運送屋さんじゃないでしょうね」
「いいえ、当社が負担させていただきます」
「うちがそちらから5km以上離れていないとして、いくら負担するの?」
「それは……」
「わたし、運送屋さんの配送料金表をみたの。あの荷物だと、安くても1200円するわ」
「そうですか。私には、お答えできかねます」
「それでもう一度、聞くけれど、送料無料なの。それとも、送料込みなの?」
「ですから、送料無料とご理解ください」
「送料込みにならないの?」
「お客さまにとって送料無料と送料込みに、それほど違いはないと思いますが……」
「違いがないのなら、送料込みでいいわね」
「ご注文いただけるのでしたら、そういうご理解でよろしいかと思いますが……」
「ずいぶん、奥歯にもののはさまった言い方だけど、まあいいわ。では、送料込みで、あの商品、3ついただくわ」
「ありがとうございます。3つ、ご注文、いただきました。放送終了後30分以内のご注文ですので、送料無料で承ります」
「あなた、送料込みでしょ!」
「失礼しました。送料込みで承ります」
「それで、いい忘れたのけれど、うちからおたくまで、近いからわたしが直接、受け取りに行きます」
「ゲェッ、どういうことでしょうか?」
「どういうこともなにも、お店に直接行って、買わせていただくってことよ」
「それは困ります。こちらは、コールセンターです。販売所からは遠く離れております」
「それは知っているわ。うちのマンションと、テレ通販のビルは隣どうしなのよ。運送屋さんを使ったら、時間も手間もかかるでしょ」
「そういうことでしたら……」
「確認だけれど、送料込みだったわね」
「はい……」
「送料が発生しないから、送料分の値引きと理解していいわね。1200円の3つ分、3600円のプライスダウン」
「そ、それは……」
「これからは、口が腐っても送料込みなんて、言わないことよ」
「あなたさまは?」
「夫はテレ通販の社長よ」
2023.8.19.