文京内科・循環器クリニックのブログ

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東京都文京区本駒込2-10-3 ウエストワンビル4Fにあるクリニック(https://www.bunkyo-cl.jp/)の、医師で院長のブログです。

新型コロナウイルスのワクチンの接種によって、まれに、心筋炎、心膜炎が起こることがあります。

ただ、頻度は高いものではなく、10万人に数名以下程度です。

新型コロナウイルスのワクチンによる心筋炎、心膜炎は、比較的若い人、男性に起こることが多いとされています。

新型コロナウイルスワクチンによる心筋炎、心膜炎の症状は、接種後から4日目程度までに起こることが多いとされています。

 

心筋炎は、心臓の筋肉の炎症で、ウイルスや細菌などの感染症、薬物、ワクチンの接種、化学物質や自己免疫反応などによって引き起されます。

心筋炎は、多くの場合は自然に治癒します。

しかし、まれに、急性期に劇症化して重篤な状態となったり、慢性化して拡張型心筋症を引き起こしたりします。

 

心筋炎の症状は、胸痛(心筋から心膜への炎症の波及を示す)、息切れなどの心不全の症状、不整脈の症状などがみられ、感染症が原因のときは発熱やかぜ様の症状もみられます。

 

心筋炎の診断は、病歴、症状、心電図、血液検査、心エコーや心臓MRIなどの画像診断、さらに心臓の筋肉を直接調べる心筋生検によって行われます。

心電図検査では、広範なST-T上昇(心筋から心膜への炎症の波及を示す)、心筋の傷害を示唆する広いQRS波や異常Q波、不整脈として心室頻拍、期外収縮、心房細動などがみられます。

血液検査では、心筋の傷害を示す心筋トロポニンTの上昇、心不全のときに上昇するNT-proBNP、炎症所見を示す白血球やCRPなどの上昇所見、その他腎機能や肝機能に関連するAST(GOT)やクレアチニンの値の上昇所見、などを調べます。

心エコー検査では、心臓の筋肉の壁の肥厚や壁運動の低下、心室の内腔の狭小化、炎症による心膜液貯留などがみられます。

心臓のMRI検査も、心筋炎の診断には有用です。

最終的には、心臓の筋肉の一部を生検で採取して病理診断を行う、心筋生検の検査が、診断と治療に有用です。

 

心筋炎の治療は、症状に応じた治療が行われますが、急性期をいかに乗り越えるかが重要です。

心筋炎は、急性期に、急な経過で心筋の壊死と炎症性物質による心筋細胞の機能障害をきたし、心肺停止やポンプ失調を呈することがあるため、この場合には、急性心不全の集中的な治療や、重症化したときには血行動態を安定させるために心肺補助装置(PCPSなど)が必要になることもあり、心移植の適応となる場合もあります。

心筋炎治療の主眼は、心筋の炎症が軽快・消失して血行動態が安定化するまで、薬剤や補助循環を使用して回復をサポートすることにあります。急性期に重症化した場合には、心臓の機能が低下する心不全や不整脈の治療を行って状態を安定させる必要があります。

急性期を乗り越えることができれば、予後は悪いものではありません。

 

このように、心筋炎はまれに重症化することもあります。

 

しかし、新型コロナウイルス感染症により心筋炎や心膜炎が起こるリスクもあります。これは、新型コロナウイルスワクチンを接種することによって起こる心筋炎や心膜炎の発症のリスクを上回ると考えられます。このため、新型コロナウイルスワクチンを接種する意義はあると考えられます。

 

新型コロナウイルスの予防接種を受けた後に、もし、胸痛や息切れなどの症状が現れた場合には、急性心筋炎を発症していないか診断するために、早めに受診していただくことが必要であると考えられます。