こんばんは。
訪問ありがとうございます。
通勤中の読書について。
すっかりハマってしまいました。
●あらすじ
友人の美樹から「一生に一度きり」と頼まれ、朋子はある旅に付き添うことに。お互い看護師、三十代半ば。美樹が旅先で打ち明けた、この先後悔しないための決断とは?(表題作)母親の再婚によって居場所を失った姉弟。二人を引き取ったのは動物園の飼育員のマア子おばさんだった。(「月夜のディナー」)波乱含みの風が問う家族、夫婦、友情の形。爽やかに心揺さぶる七編。
●感想
すごく良かった!!
きのうのオレンジがすごく良くて、早くも今のところ今年NO.1の予感がしていますが、その後に読んだ本たちも良くて…。
今回は始めての短編でしたが、かわらずに良い。
どれも泣けます。
「波風」は表題作。
沖縄を、親友の美樹に頼まれたあることをするために一緒に旅します。
そのあることは、最後までわからないままついていく主人公ですが、30代半ばの人生の迷いがいい。結局美樹のあることは果たせずに帰ってきますが、沖縄の描写が解放感があって良かった。
私も色々煮詰まってるから、パーッとストレス発散に旅がしたいなあ。
「鬼灯」
父親に自●された娘視点の話。
母親が再婚した相手に嫌悪感を抱いていたが、再婚した理由を聞くことで納得して、見る目が変わるかな?というストーリーが母親の手術、浅草のほおづき市を絡めて描かれていて、なんだかちょっと淡々としてはいるが、幻想的だった。
男が母親と再婚した理由が泣けました。
しかし父親の自●の理由はなんだったんだろう。
「月夜のディナー」
母親の再婚相手とうまく行かず、離婚した父親の叔母に引き取られた姉弟の話。
叔母に反抗していた弟が明日結婚するからと中華を二人にご馳走する。
姉視点で、子どもの頃のエピソードが思い出され、叔母と弟の到着を中華を食べながら話しているんだけど、ただの食事のワンシーンのはずなのに、読みごたえたっぷりでした。
二人が叔母に大切に育てられたことは、二人の職業やエピソードだけでも十分に分かるけれど、ラストの弟の言葉が、もう泣けた!
あれはずるい!!
外で読んだのが失敗でした。
また、姉視点の話なのもいい。
「テンの手」これが一番悲しいけれど、好き。
テンが報われなさすぎて泣けてきた…。
野球部の期待のエースと幼馴染みのキャッチャーの話。
テンへの神様からの試練が多すぎる。天才と思われていたけれど、プロ入りを目指して影で努力をしていたテン。高校2年生のときに事故で右手を失う。
キャッチャーだった晃平視点で語られていて、テンがいなくなって甲子園の出場も遠退き、ピッチャーに転向させられるがうまく行かない…
右手を失い出来る形で部に所属するテンに八つ当たりするのだけど、テンの腐らずにいるところがすごく良くて、もうちょっと報われる結末でも良かったのにな。
晃平は高校卒業後、プロ野球選手になり、10年後にメジャーに行くと言うところで、そろそろ一人でもマウンドに立てるようにならないと、とお守りを手放す決意をする。
メジャーまではテンの描いていた夢でそれをなぞるように生きてきた感じがまた…思い出しても泣ける。
きっと、テンの人生を親友として叶えてたのかな?
その後の、引退セレモニーに、家業を継いだテンが家族とともに見に来る、と勝手に続きを妄想して、悲しい気分を無理やり納得させた。
だって死んじゃったと言う直接的な文章はないし、ギリギリいける妄想だよね。
「真昼の月」
これは人生やる気がない主人公が、アルバイト先の介護施設に面会に来た女性に一目惚れする話。
その女性には実は秘密があって、まあそうなんじゃないかなー?と最初に予想はつくけど、確執のあった母親の最期を看取れたところには感動したし、それを馬鹿にした同僚に質問した一言が良かった。
主人公は大切な事に気づけてよかったね!
この話も結構好きだった。
どの話も短いけれど、しっかりとした内容で、この作家さん、本当にすごいな、と思う。
今年は藤岡さんに出会えてとってもラッキーだと思う。よく「きのうのオレンジ」を手に取った自分!!と褒めたいくらい
この波風も手元に欲しいんだけど、絶版なのかな? 本屋さん探しても、ネットで探しても見当たらない。
次は初読みの作家さん。