こんばんは。

訪問ありがとうございます。


通勤中の読書について。

資格勉強をしていたため、読書は1ヶ月程中止していました。なんとか試験は終わったので再開。



思ったよりも早く回ってきた町田さんの本。

本屋大賞、映画化されていますが町田さんの長編はあまり私には合わないようなので若干心配。 

 

●あらすじ

52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一匹だけのクジラ。何も届かない、何も届けられない。そのためこの世で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる――。



●感想

出だしから寂しい雰囲気でうるうる…。

貴瑚が田舎に移り住む所から始まるけれど何があったのだろう? と引き込まれた。

そこで出会った少年を救いだすのと、過去に

貴瑚に起こった出来事が平行して進む。

かつて親から虐待を受けていた貴瑚を助け出したアンさん。

アンさんと言いながら男性か? と読み始めたらすぐにフルネームが出てきて、それが引っ掛けではないんだと、ちょっと残念。

だけど、本当に男性? と言動に違和感を感じて読んでいると、やっぱりそうなのね。

そして、アンさんが選んだ結末が悲しすぎた。


貴瑚が救いだした少年もラストは明るい未来が待っているような感じなのに、そこにアンさんがいないんだなー。

最初こそ失礼な発言をした村中も、実は良いヤツで、いつになるか分からないけど、愛(少年)と貴瑚の未来に村中も居ればいいな、と温かい気持ちになった。ただし穏やかな関係で、愛とライバル関係とかは嫌だなあ。


最後の1ページがなんだかすごく好き!

人によっては中途半端だと思うかもしれないけれど、たぶんあれがベストな終わりかたなんだろうな。その先を読者が想像する余地がたくさんあって。

私としては愛を貴瑚が後見人として引き取らないけれど、交流は続いている、変わらずお互いが支えになっていると思いたい。

その交流の中に、親友の美晴や恋人の匠もいて、貴瑚の隣にいつか村中も加わるみたいな未来を勝手に想像して満足している。


この作品を読んで、初めて52ヘルツのクジラを知った。

高周波で仲間に声が届かない孤独なクジラ。

シロナガスクジラと他の種が混ざったという説もあるらしいけれど、シロナガスクジラの寿命って長いよね。そんな年月を一人で生きているのか?

なんだか途方もない。

貴瑚や愛は、支えになる人を見つけられたけど、このクジラも実在しているのなら、誰か(人ではないけれどクジラ)を見つけられるといいんだけど。


デビュー作の、「夜空に浮かぶチョコレートグラミー」に雰囲気が似ていて、長編だけど、これは好き!


町田さんらしく、不幸が沢山詰まっている話。その中で周囲に恵まれて明るい未来を見出だしていく感じ。


ただ、気になったのは、

虐待を受けて暴力に敏感になっていた貴瑚が、失礼なこと言われたからと、村中にビンタを食らわせた冒頭。

あんなことするのか??

失礼とは言え、普通でもビンタをする程の事でもないような。増しては自分も理不尽な暴力を受けていた身で、愛の虐待に憤っていたはず…ここが気になってしまった。

あとはアンさんの選んだ結末。これって貴瑚のためと言いながらトラウマを増やしたよね?

でも考えてみると、アンさんも助けて欲しくて必死にSOSを出しながらも、貴瑚を助けたいと思う気持ちで揺れていたのかな?


そして、映画がこの間までやっていたようですが、映画は観なくていいかな…。

町田さんの文章だから感動したと思うので。



あ、あとあまり関係ないけど、『魂の番』が何度か出てきたけど、番といえば…

オメガバースしか出てこない腐った思考。

どうしても『運命の番』と変換して読んで、違和感ありまくりでした。



次は

またまた町田さん。