カナダのラリガン首相が「アメリカとの貿易を一時停止し、中国との貿易を拡大する」と発言しました。

ニュースだけ見ると、「カナダが中国に傾いた」「反米路線だ」と感じる人も多いでしょう。


しかし、実際の構造はもう少し深いところにあります。




いま中国は、毎月およそ 1,000億ドル(約15兆円) の外貨を稼いでいます。

けれども、そのお金をどう使うかが問題です。

アメリカの技術を買うことは制限され、土地の購入も世界中で制限されているため、

ドルを使いたくても使えないのが現状です。


そのため、中国は外貨を「保有」する方向に動いており、

それを人民元や香港ドルの防衛にまわしています。




ここで、カナダが中国との貿易を広げるとどうなるでしょうか?

中国は再びドルを支出することになり、ドルが世界に循環します。

つまり、表面的には「カナダが中国と組む」ように見えても、

結果的にはアメリカのドル体制を維持する方向に作用するのです。




アメリカの本当の強さは「制度」にあります。

軍事力でもなく、単なる貿易でもなく、

世界の経済をルールと仕組みで管理すること。


たとえ他国が一時的に中国と接近しても、

その流れの裏にはドルという制度がしっかりと存在し、

最終的にはアメリカの経済的優位を保つ結果になる。




それが「制度で世界を動かす国」アメリカの本質です。



見た目の政治的な動きだけで判断するのは早い。

カナダの対中接近も、実は「アメリカに有利な構造の中」にある――

世界経済の本当の支配力は、“制度”にあるのかもしれません。