目が合った瞬間、

感じ取ってしまった。

破滅の匂いを。


人は何故、

己を破壊するものに惹かれてしまうのか。


社会における隠れ蓑を全部剥ぎ取られて、

取り繕うことのできないあるがままの本性が

露わになろうとも。



偽りの世界。

偽りの自分。


偽善。

欺瞞。

虚妄。


嘘。嘘。嘘…。


偽りだらけの世界を

めちゃくちゃに破壊し尽くして、

更地になった真っ新な景色を見てみたい。


ありのままの自分で

真っ新な大地に立ち、

「これが真実だ!」

と叫びたい。


欲望のままに

求め、

貪り、

酔い痴れたい。


甘美で、

淫らで、

罪深い、

欲望の底無し沼に沈みたい。



社会の固定観念という窮屈な枠の中で、

獣の本性を必死に押し殺して、

飼い慣らされた人間の理性の箍は、

ふとした瞬間に、

いとも簡単に外れてしまう。


そう、

それは

破滅の匂い

に引き寄せられて。


破壊したい欲望。

破滅させたい欲望。


薄っぺらい偽りの世界を。

取り繕った偽りの自分を。



己の欲望を抑圧してきた二人の獣は、

出逢ったが最後、

瞬時に同じ匂いを感じ取り、

陰陽の理に抗えずに、

魂ごと引き合っていった。


互いに身の破滅を感じながらも、

近づきたい。

触れ合いたい。

一つになりたい。

と、

今まで抑え続けてきた欲望が激しく疼き出し、

その熱情は螺旋を描いて燃え上がる。


初めて一つになったとき、

二人の獣は深い感動と恍惚を覚えた。


こんな感覚がこの世に存在していたとは。

今まで知らずにいた神秘の境地。

世の中の禁忌を犯した者だけが手にすることのできる禁断の果実。

言葉にできないこの感覚を味わうためにこそ

人間は生きているのではないか。



相手の中へ深く入り込み、

相手を中へ深く受け入れ、

身も心も溶け合うような

痺れるような甘美な感覚。


その息遣い、

眼差し、

体温、

身体のしなり、

指先の絡み。


言葉にせずとも相手の感情が流れ込み、

欲望と恍惚の共有の渦の中で、

求めるままに、

求められるままに、

貪り、

昂り、

鬩ぎ合う。


熱い、熱い、熱い…


尽きることない快楽の痺れが

更なる恍惚を生み出していき、

その熱情は

身も心も二人の境界線をも溶かしていく。


頭の中が真っ白になって、

何も考えられなくなり、

羞恥心も自尊心も捨て去って、

快楽の沼に溺れていく。


"このまま時が止まればいい!"


二人の世界。

二人だけの快楽。


欲望のままに

底知れぬ沼に堕ちていく二人の獣。


永遠に、

このままで…。



囚われた二つの魂を手中に収め、

悪魔は今日も

妖しく微笑む…