歌ものバンドだとリスナーのボーカリストに対する好みが大きいと思うのです。人の好みについて文句つける気はありませんが、頑なに初代シンガーがよかったと拘る人ってどうなんだろうと思います。交代によって個性の違いで変化する音を楽しむのもよいし、ベテランバンドなどは衰えたシンガーより若くて活きの良いのに歌わせたほうがよいのです。そんなわけで今日はシンガーの交代で賛否両論渦巻いたナイトウイッシュです。
フィンランド産シンフォニック・メタル・バンドのシンガーをターヤ・トゥルネンから元ALYSON AVENUEのアネット・オルゾンにチェンジしての2007年リリースの6thアルバム。個人的にはターヤ時代の"Once"と並んで最高傑作です。ターヤをクビにしてソプラノ声と神秘的な雰囲気を失ったバンドが新たに手に入れたのは“普通”声。私はキュートで儚げなアネットがお好みです。まるでABBAみたいなんですけど、実際アネットはABBAのカバー・バンドをやっていたようですね。ルックスもキュートっていえばキュートなんですが、まあ普通。加入当時既に子持ちで35歳といこともあって、歌唱とビジュアルともにインパクトがあったターヤとはまったく正反対でした。
それで肝心のアルバムの出来はといいますと、壮大なシンフォニック・アレンジは健在ながら、ターヤ在籍時のようなオペラティックな雰囲気から、映画音楽というかファンタジー路線への転換をはかっている点が今作の大きな進化といえます。またアネット嬢のキュートでロートーンの歌唱も曲調にはまっており、ターヤ在籍時にはなかったスピードチューンがあったり、アップテンポな曲でその魅力が発揮されています。少々線の細いボーカルですが、それを補うようにコーラスが重厚になっている点でも前作"ONCE"に比べゴシック・メタル的なダークな雰囲気が増しているが、陰鬱さはあまり感じられず非常にアグレッシブな作風に仕上がっています。マルコのボーカルとのユニゾンも映えてぞくぞくします。まさにタイトルどおりダーク・パッション・プレイ!
前ボーカルのターヤは凄いし好きなんですけど、個性の変化をポジティブに捉えて楽しむほうがとくですよ。
日本盤ボーナストラック #14 "The Escapist"は佳曲で、それも含めて計80分という超大作ながらも、全体的にメランコリックでありながらも美しいメロディの充実によって飽きの来ない作品にといえます。シングル"Amaranth"は名曲。
Nightwish/Amaranth