空の青に溶けそうな満開の桜。
川縁に枝を張り出した桜から、川面に落ちた花びらが筋を描いて流れて行く。
も腕も悪くて実物の美しさが捕まえられないのがもどかしい。
風に吹かれて散りはじめた桜の下に立つと、はらはらと舞い落ちる花びらが肩にかかる。
薄く柔らかな花びらが、遠慮がちにそっと触れては離れてゆく。
優しく温かい存在に、柔らかく包み込まれているような錯覚を覚える。
何かを語りかけてくるような気もするし、
黙ってこちらの話しを聞いてくれるような気もする。
桜は本当に不思議な木。
他の植物に精神性など感じた事はないのに、
桜にはひょっとして魂があるのではないか等と思えてしまう。
静かに降りそそぐ花びらを愛でているうちに、やがて時の経つのも忘れてしまう。
太古から繋がれてきた生命に思いを馳せ、
本当の豊かさとは何なのかという思いが頭を過ぎり、
ああ、いま踏み締めている地面に答があるな、と思う。
まるで桜に酔わされたように、とめどない思考が湧き上がっては消えてゆく。
桜は来年も美しく咲いてくれるだろうか。
願わくばこのまま変わることなく、いつの世にも咲き誇ってくれることを