涅槃と安息
あの死ぬほど才能持ってるクソ野郎が、俺がほしかったもんを全部持ってやがったんだよ。金持ちで有名で、あの頃トップに立ってたロック・バンドで音楽やってて。しかも自分のことが嫌いだとか、死にたいとかいう曲を書いてんだぜ! 俺としては、俺は自分のことをファッキン愛してるし、永遠に生きてやるさって思ってたね。ノエル・ギャラガーNirvanaがいたから、「Live Forever」が生まれた。グランジの陰鬱な空気を吹き飛ばす、"生"への叫び。それはリアム・ギャラガーという強力な拡声器によって、世界へ放たれた。Maybe I just want to flyたぶん俺は飛びたいだけWant to live, I don’t want to die生きたいんだ、死ぬなんてクソ喰らえMaybe I just want to breatheたぶん俺は息をしていたいだけMaybe I just don’t believeそんなの俺は信じねぇMaybe you’re the same as meたぶん俺とお前は同じWe see things they’ll never see俺らはヤツらが見えないものを見てYou and I are gonna live foreverお前と俺は永遠に生き続けるんだNirvanaには入滅、つまり"釈迦の死"という意味がある。生を憂う、若さ。1994年4月5日、カート・コヴァーン没。死に抗う、若さ。1994年4月11日、oasisデビュー。陰と陽の転換。今思えば、そうだったのかもしれない。翌1995年、2ndアルバム『(What's The Story)Morning Glory?』リリース。冒頭を飾ったのは、HelloWe Live In The Shadows俺らは影の中で生きAnd WeHad The Chance And Threw It Awayみすみすチャンスを逃してきたAnd It's Never Gonna Be The Sameもう元には戻れない'Cause The Years Are Falling By Like The Rain年月は雨のように流れ落ちるIt's Never Gonna Be The Sameだからもう元には戻れないんだよTill The Life I Knewこうなるはずだった人生がComes To My House And Says俺んちにやって来てこう言うまではHelloハロー少し憂いを帯びたメロディ。日常の、明朗な挨拶とは異なる「Hello」。このニュアンスは、Nirvanaの「Smells Like Teen Spirit」でも印象的に使われている。Hello, hello, hello, how lowハロー、ハロー、ハロー、どんだけ堕ちてる?Hello, hello, hello, how lowハロー、ハロー、ハロー、どんだけ堕ちてる?Hello, hello, hello, how lowハロー、ハロー、ハロー、どんだけ堕ちてる?Hello, hello, helloハロー、ハロー、ハロー冒頭のノエルの発言をカートへの愛憎と捉えるなら、反抗心を剥き出しにした「Live Forever」に対し、「Hello」は悲哀への共鳴のように感じる。思えば、「Smells〜」も2ndアルバムのオープニングだった。"永遠に生き続ける"時を経て、いつしか叫びは祈りへと変わった。Nirvanaには"安らぎの境地"、oasisには"安息の場所"という意味がある。陽あれば陰あり。2組は案外近いところにいるのかもしれない。