翌日の昼過ぎになって、みんなが来た時にはまだ彼等は寝ていた。ソファでお互いの肩にもたれかかりながら眠る2人はとても幸せそうだ。起こすのが申しわけないくらい幸せそうな2人はまだ自分達の存在に気がついていない。

『アーチー、アニー。彼等を起こすのは辞めよう。起きるまで、僕達はサンルームでお茶をしないかい?』

『えぇ、その方がいいと思いますわ。ね、アーチー。』

『そうだな、アニー。大叔父様、そうしましょう。』

 3人は頷き合うと書き置きを残して部屋を出ようとした。扉を静かに閉めようとした時、彼が目を覚ましたのだ。

『すみません、いらしてたんですね。昨夜彼女と語り合っていたら、寝不足になってしまって…。今、彼女を起こしますね。』

『いや、テリィ。起こさなくていい。先に君に昨夜の話を聞こうじゃないか。悪いが彼女をベッドに運んでやって欲しい。』

 アルバートさんは笑って彼にそう言った。彼は頷くと、彼女をベッドに運んでみんなと部屋を後にした。アニーがサンルームに紅茶と軽いお昼を持ってくると話は始まった。

『アルバートさん、昨日はお気遣いありがとうございました。おかげでゆっくりと2人で話ができました。』

『テリィ、キャンディと何を話していたの?』

 アニーが興味津々といった様子で彼に聞いた。アーチーも口にはださなかったが興味がある瞳をしている。

『キャンディとは、離れていた10年間の事を話したんだ。お互いがどんな時間を過ごしていたのか…。2人共、同じ想いでいた事が分かってよかったよ。』

 彼は恥ずかしそうにそう話した。アーチーはそんな彼をからかった。

『君がキャンディと同じ想いを?あんなに美人な婚約者がいたというのにな。君も彼女と同じ様に泣いていたという事か?』

『アーチー、からかってはだめよ。やっぱりあなた達は、心の底で結ばれていたのね。ロミオとジュリエットみたいだわ。昔、キャンディに言った事があったのよ、あなた達は心の底で結ばれているんじゃないかって。その通りだったわ。』

 アニーは感動した様にそう言った。アーチーはその隣で少し呆れた様な顔をしている。アルバートさんは安心した顔で頷いた。

『テリィ、今度こそ2人で幸せになってくれよ。もう君達が苦しむ姿は見たくないんだ。』

 彼は真面目な顔をして頷いた。

『もちろん努力します。ですが、僕の仕事が仕事なので…彼女を傷つけてしまうかも知れません。メディアは恐ろしいくらいの情報力をもっていますからね。彼女について、あることないことを書くかも知れません。ファンが彼女に嫌がらせをするかも知れないです。僕は全力で彼女を守るつもりですが…』

 アルバートさんは頷くと、

『そこは大丈夫だ。アードレー家が圧力をかけよう。誰にも君達の邪魔をさせない様にね。ありとあらゆるゴシップ誌や新聞社に多額の寄付を毎年しているんだよ。少し圧力をかければどうとでもなる。君のファン達から君達を守る為にも、余計な情報を流さない方がいい。隠れ家も用意した方がいいね?どうだろう、ニューヨークのアードレー邸に住んだら。見つかりにくい所にあって、警備もバッチリ…。屈強なガードマン付きだよ。たしか君の劇団から車で15分くらいの場所にあるはずだ。ニューヨークの屋敷は一族の中でもごく僅かな人間しか存在を知らないんだよ。それも僕とコーンウェル夫妻、キャンディ、ブラウン氏、そしてジョルジュしか知らないんだ。』

 と言った。アーチーは苦笑いをするとこう言った。

『大叔父様、まだ何も決まってないんですよ。少し気が早すぎます。彼女と彼が結婚という形を取るのかも分からないし…。』

『あらアーチー、ここまで彼は来てくれたのよ。キャンディと結婚するに決まってるじゃないの。まったく…まだテリィに嫉妬しているの?テリィあなた達は結婚するのよね?』

 アニーは真剣にそう言った。

『もちろんだ、アニー。俺はキャンディと結婚するつもりだよ。彼女が良ければだが…。』

 彼がそう言うとみんなが笑った。彼はまだ気がついていなかったが、彼の後ろに彼女が立っていたのだ。

『もちろんよ、テリィ。あなたと結婚するわ。』

 彼は驚いた顔をして、彼女を見つめた。

『キャンディ、君はいつからいたんだい?』

『テリィ、おはよう。ついさっき来たのよ。みんな、遅くなってしまってごめんなさい。それと昨日は心配をかけてごめんなさい。私、従軍看護婦には行かない事にしたわ。』

 彼女はみんなに謝った。

『まったくだよ、キャンディ。もうこれきりにしてくれ。でもたまになら君を探すのもいいな。君を探していたら、色んな物を発見できたんだ。』

『キャンディ、心配したのよ。あなたはいつも1人で行動に移してしまうんですもの。でも何もなくてよかったわ。キャンディ、今度こそ本当に幸せになれるのね。本当に私嬉しい。』

『おめでとう、キャンディ。もうテリィに心配を掛けたらいけないよ。僕ももうあんな想いはたくさんだ。』

 みんなは笑って許してくれた。彼女はみんなに感謝をすると共に、心から謝罪したのだ。

『改めてキャンディ、俺と結婚してくれないか?』

 みんなが静かに見守る中、彼の言葉に彼女は頷いた。

『テリィ、喜んで。あなたからその言葉を、聞けるとは思ってなかったから嬉しいわ。』

 彼女がそう言うと、拍手が沸き起こった。2人は幸せそうにお互いを見つめ合って微笑んでいる、みんなに祝福を受けながら、彼等は着実に未来への道を歩き始めた。