実は、辻村深月さんの作品を読んだのは今回が初めてで、

"2023年のベストセラー。すでに映画化も決定し9月公開"

ということも全く知りませんでした。

「傲慢と善良」

先日、図書館で別の予約本↓を受け取り

ついでに『オススメコーナー』で目にして気になってページをめくり、

内容がストーカー・婚活・マッチングアプリと　ミステリー絡みで面白そうだったので

"即借り！"した…という奇跡の出会いだったのです。

では、私なりの（無駄に細かい）ストーリー紹介です。

主人公がどんな人なのか？を最初に書くのは、

私自身が作品のまとめを兼ねて反芻したいから。と、ご理解下さい。

★西澤架（39歳イケメン）は、

東京・三鷹に生まれ、大学までは自宅で両親と暮らしていたが、

広告代理店で働き始めてからは家を出て、

大ぜいの友人・女友達と交流を深め青春を謳歌していた。

「自分のことは絶対に自分で決めたいし、自由でいたい」架は、

中学生の頃から恋人がいなかったという時期がなく、

文字通り女性に不自由しない人生だったが、

32歳の頃に付き合っていた6歳年下のアユから

『架君は私と結婚するつもりあるの？』と結婚をせかされて驚く。

「いずれは、と思っているけど　今すぐどうっていうのはちょっと考えられない」

と答えた架に「そう」「わかった」と静かに返したアユは、

架と別れた数か月後には新しい相手との結婚を決めて、

フェイスブックのトップページに純白のウエディングドレス姿を載せている。

アユが去ってからしばらくして、漠然と「結婚したい」と思うようになり

友人たちからも『架ならすぐに次の彼女が見つかるよ』と言われたが、

広告代理店を辞めて父親亡き後に引き継いだ地ビールの輸入会社では出会いもなく、

婚活に疲れはじめて、マッチングアプリに登録してみた。

そこで出会ったのが、現在の婚約者・坂庭真実だった。

★坂庭真実(35歳大人しい優等生タイプ)

群馬県・前橋で生まれ、大学も地元のお嬢様女子大を卒業後、

親の紹介で県庁の議会事務局で働いた後、母親の強い勧めで結婚相談所に登録し

ふたりの男性とお見合いをするが結婚には至らず。

突然「実家を出て東京で一人暮らしをしてみたい」と

東京・小岩で暮らす姉に電話で相談した後に、

部屋探しから引っ越しに至るまで姉の協力を得ながら実家を出た。

東京で働き始めた英会話教室の派遣事務の仕事の傍ら、

登録した婚活アプリを通じて西澤架に出会い運命を感じる。

架と知り合ってから1年半近く経った頃、奇妙な現象が続いた。

・人からつけられている気がして振り返った時に、あわてて走り去る背中を見た。

・家の郵便物で、届くはずの物が届かないことがあった気がする。

・背中でフラッシュのようなものが光ったり、スマホの撮影音がしたことがある。

・家にある物の配置が変わっている気がする。

そしてある晩、真実から架に電話が来ます。

『あいつが、あいつが家にいるみたい。どうしよう。帰れない』

『架くん、架くん、助けて！　お願い早く帰ってきて』

↑物語の冒頭シーンがこちらです

この時に「この子を守らねば」と決意した架は、

自分のマンションで真実と暮らし始め、挙式の日取りも決めたのでした。

ところが、この2か月後に真実が突然姿を消してしまう。

「ストーカーが連れ去ったのか、何か事件に巻き込まれたのか」と

警察に届けるも「事件性は極めて低い」とされ、捜査もしてくれない。

そこで、架が自分で群馬に行き真実の両親や元同僚、

果てはお見合い相手に直接会って話を聞き、彼女が失踪した謎を探る…

構成としては、第1部が架の独白、第2部が真実の独白になっていて、

架と相手との会話が延々と続くので(個人的に)正直飽きてくるのですが、

第1部の後半、架の女友達との会話から俄然面白くなります。

ネタバレになるのでこれくらいにしておきますが、

この古くからの女友達・美奈子たちの発言で、

「あぁ、どうして気が付かなかったんだろう！」と衝撃を受けました。

タイトルの「傲慢と善良」は、

真実がお世話になった結婚相談所【小野里】の高齢女性所長の言葉で、

『お見合いがうまくいかない人は、自分に釣り合う相手じゃなければ納得しないし、

その基準も相当高い　いわば傲慢な面がある』という

「なるほど確かに！」と言いたくなる分析で、

真実の姉の言葉では、

『妹はずっと母親のいいなりになって暮らしてきた。

真面目でいい子の価値観は家で教えられても、

生きていくために必要な悪意や打算は誰も教えてはくれない。

そういうのは人に教えられるものではなく、

巻き込まれてどうしようもなくなった時に悟るもの』

この部分がなかなか深くて、読了後にまた読み返して心に刺さりました。

どちらかというと、

"自分のことは自分で決めて自由に生きてきた"私としては、

"人の言うことに従い誰かの基準に沿って生きることの方が合っている善良な人"は

あまり共感できないのだけれど、実際何人かは知っています。

私たちシニア世代は(結婚適齢期はクリスマスケーキと言われた）

【女が30歳を超えたらもう終わり】みたいな変な風潮を経験しているので、

現在の婚活事情は理解できないことも多々ありますが、

個人的には「既婚だろうが未婚だろうが、子供がいようがいまいが、

本人たちが選んで納得して幸せを感じているならばそれでいいんじゃない」と思います。

SNSなどで過度な幸せアピールをしなければ(笑)

映画化にあたって、

W主演の西澤架役は藤ヶ谷太輔さん(ご本人のたっての希望だそうです)

坂庭真実役は奈緒さん。これは観に行かないと♪

本音を言うと

西澤架役は松坂桃李さん、美奈子役を戸田恵梨香さん

ご夫婦で演じてもらいたかった～( ´艸｀)

３０歳～４５歳くらいまでの婚活中の皆様　並びに、

そんな息子＆娘を持つ親御さんに是非読んで(観て)もらいたい作品です。

文庫本だと、朝井リョウ氏の解説(高評価)が読めるらしいです