経済プレミアム

【転載開始】

日本のボーナス「10兆円減」景気が良くなるはずがない

2017年7月27日 編集部


■第一生命経済研究所の熊野英生氏に聞く


 企業業績は良いにもかかわらず、社員の

ボーナスはあまり増えていない。

どこに原因があるのか。

第一生命経済研究所首席エコノミストの

熊野英生さんに聞いた。

【聞き手は経済プレミア編集部・平野純一】


 ──人手不足が言われるなど日本経済は

多少なりとも良くなってきていますが、

ボーナスは増えていないようです。


 ◆熊野英生さん ボーナスの年間支給額は

2015年が64.8万円(国税庁「民間給与実態統計」)

でした。

08年のリーマン・ショックで落ち込んだ後は少し

ずつ上がってきましたが、その10年前の05年の

67.4万円にまだ届いていません。


 日本全体で見たボーナス支給総額は、15年は

31兆円で、ピーク時の1997年の41兆円から

10兆円も落ち込んでいます。


 一方で企業の利益は増えています。

法人企業統計の全産業・全規模企業でみると、

2016年度の経常利益はリーマン・ショックの

08年度と比べて25%上回っています。

にもかかわらず、ボーナスはほとんど増えて

いません。


 いま人々の景気回復の実感がとぼしい理由は、

所得が伸びず消費に波及していかないからです。

私はボーナスに大きな要因があると考えています。

つまり、企業が業績を回復させても、ボーナスで

社員に還元するというルートが消えてしまって

いるのです。


■バブル入社世代のボーナスが減っている


 ──もう少し細かくみると、どこに大きな理由が

あるのでしょうか。


 ◆「バブル入社世代」のボーナスが減ってきている

ことが挙げられます。

数が多いバブル入社組はそろそろ50代半ばにさし

かかります。

昔はちょうどこの年齢層を中心として中堅所得層

(年間所得700万~1500万円)を形成し、全所得の

20%をボーナスでもらっていました。

しかしバブル世代はポストも限られ、ボーナス全体の

支給額が下がっています。


 一方、バブル崩壊後の90年代に採用抑制の影響を

受けた「就職氷河期世代」は、非正規雇用になった人

も多く、バブル入社世代よりもさらにボーナスをもらえて

いません。

また、いまは正社員でもボーナスをもらえるタイプの

職種ではない人も増えています。

これらがボーナス所得が増えない大きな要因です。


■非正規から正規になっても給与アップには時間が

 かかる


 ──ボーナスを見る時はよく何カ月分という言い方を

します。


 ◆その計算で言えば、いまは年間2カ月分もありま

せん。

意外なことに、全体で平均すると夏のボーナス1回で

1カ月分もないのです。


 現在、パート労働者を除く一般労働者の年間所得に

占めるボーナスの割合は14%です。

つまり「0.14×12=1.68」で、年間のボーナスは

1.68カ月分しか払われていない計算です。

大卒で大企業に勤めている人で4カ月分程度です。

大手電機や自動車では5~6カ月分を払う企業も

ありますが、それらはほんのわずかです。


 ──これでは景気が多少良くなっても、その実感が

得られないし景気にも勢いがつきません。


 ◆いま失業率は3%近くまで下がり、労働需給は

逼迫(ひっぱく)してきています。

しかし日本の労働慣行からいえば、賃金が急増する

ことにはなりません。

例えば、非正規雇用で年収300万円の人がボーナス

が増えて一気に年収500万円になったりすることは

まずありえないのです。


 確かに人手不足が叫ばれ労働需給がタイトになって

いることで非正規雇用から正規雇用になる人は増えて

います。

しかし、ではその人の給与が上がるかというとそうでは

ありません。

例えて言えば、元々の正規雇用の人が乗っている

エスカレーターとは違うタイプのエスカレーターの

一番下に並んだだけなのです。

そこから給与が上がっていくには5年も10年も

かかります。


 一方正社員は、終身雇用で守られている分、

業績が良くなってもボーナスがものすごく増えたり、

一気にベアが上がっていくということは、今後は

あまりないと思います。

終身雇用を維持するためには、企業は景気が悪く

なった時でも固定費を負担できるだけの蓄えを

持っていなければならないからです。

人口減少で事業拡大意欲が上がらない


 ──日本企業はどうしてここまで慎重なのでしょうか。


 ◆やはり人口減少によって、将来の需要が見込め

ないことが大きく影響していると思います。


 将来的に需要の拡大が見込めない中では、企業は

良い人材を多く確保して事業の拡大をしようという

インセンティブが働きません。


 企業業績とボーナスが連動しなくなって、企業が

好業績を出した時でも社員への還元ルートがなくなって

きていることは大きな問題です。

これがマクロ経済の動きと景気実感の差を生んでおり、

このような状態が続くと好循環が成り立たなくなって、

いつまでもデフレ経済から抜け出すことができなくなって

しまいます。


【転載終了】

*************************


 ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授の

ご託宣だそうですが。


 「日本では国民1人当たり77万円の通貨流通量

(日銀の紙幣発行残高のことと思われます)があり、

家族4人とすれば一家に300万円以上の現金がある

ことになる。

米国でも1人当たり4200ドルになる。

つまり(日米とも)大量の現金の在りかがよくわからず、

また高額紙幣の割合が非常に高い

(日本では1万円札が90%、米国でも100ドル札が80%)。

ここから推計できることは高額紙幣の多くが非合法な

経済活動に使われている」とあります。


 この通貨流通量を動かす経済政策を打たないで、

消費増税など真逆な政策をするからでしょうね?