友達と一緒に行くという口実で
口うるさい妻を家に置き去りにし
念願の一人旅に出たH君は
ある ひなびた温泉地にやってきました
夕食を終え H君は
一風呂浴びようと露天風呂に
あたりはすっかり漆黒の闇
ウイークデーのせいか露天風呂には
他に客はおらず 独り占め状態です
すっかり長湯してしまい
さあ上がろうかと
ふと 外塀のほうを見やると
女の人がこちらを見てました
H君は 思わず 目を逸らしました
少し近眼のため
ハッキリとは見えませんでしたが
女の人がこちらを見てたのは確かでした
(あー 仇討ちの湯 っていうのを聞いたことがある
女湯の方から 男湯が見えるお風呂があるらしい
ここはそうなのかな?)
H君はタオルで前を隠して風呂から出ました
(お尻は見られたかも)
部屋に帰ると 別に気にすることもなく
そのまま寝てしまいました
朝 H君はサイレンの音で目を覚ましました
窓を開けると 露天風呂の方向がなんだか慌しい
廊下をいく仲居さんに訊いてみると
「ゆうべ 露天風呂の外にある木の枝に縄を掛けて
女の人が首吊り自殺したそうなんですよ
それで パトカーとか来てるみたいです」
仲居さんに確認すると
外塀の向こうは女湯ではありませんでした
H君は 風呂に入っている間
ずーっと死体に見つめられていたのです
H君は 朝食もそこそこに チェックアウトしました
駅に向かうタクシーの中で
思い出したくも無い昨夜を思い出してみると
風呂上りに 喫茶室に入ったとき
お冷を 2つ出された
(えーっ まさか・・・)
そして 駅についてタクシーを降りるとき
運転手が
「奥さんも足元に気をつけてください」
(うっそー・・・なんでー)
列車に乗って 車内販売の人に
「ホットコーヒー ください」
「おひとつでよろしいですか?」
(ア゛ーー となりに誰も座ってないのにーー)
やっとのことで 自宅に辿り着き
玄関ドアを開けると
H君の妻が迎えた
「おかえり 早かったのね どうしたの? 顔色悪いよ」
「ごめんなさーい もう二度とひとりで温泉に行かないから
助けてー」
「えー 友達といったんじゃなかったの?
どういうことなのよ! 」
「なあ 俺の後ろに・・・・誰か憑いてきてない・・・・?」
後日談・・・・・・
知り合いの霊能者によると H君の横にいたのは
H君の奥さんの生霊で
温泉までついてきてしまったそうです
自殺した女性は憑いていないとのことで
ほっとしたH君ではありました 【終】
今度 温泉に行くときは
奥さんを連れいってあげてくださいネ