Funeral Wreath -406ページ目

【二人】

【無邪気】の後日談的な。


「―――ふう、」


夜。小さな二人の従者をベッドに寝かしつけ、脇の椅子に腰かける。
頬杖を付きながら自然と微笑んでしまう可愛らしい寝顔を眺めて
いると、使用人が来客を告げに来た。


「グレンが?」

こんな夜更けに?

少々急ぎ足で客間に向かう。
ノックをして扉を開ければ、黒髪の男が立っていた。

「珍しいね、君がこちらへ来るのは。何かあったのかい?」
「いや・・・久しくお前を見なかったのでな」

顔に「?」が張り付いた。
だがそれも僅かな間の事で、ジャックは少々照れ笑いを浮かべる。

「それで会いに来てくれたのか・・・嬉しいな」
「用もなく来て悪かったな、すぐに帰る」
「嬉しいって言ったろ?ゆっくりしていきなよ」

背を向けて扉に向かおうとするグレンのコートを引っ張り
手にしたそれに顔をうずめる。

「いや、正直あの後恥ずかしくってね・・・なかなか君に
 会いに行けなかったんだ」

背中にジャックの体温を感じながら先日の事を脳裏に描いた。

「普段あれだけ恥かしい事してるお前がか」
「え~、それ結構ヒドいよグレン」
「事実だろう」
「ちょ・・・性格悪くなってないか?」

くつくつと背中に笑いをかみ殺す音を受ける。どんな顔をしているか
見てみようと振り返りかけて、ぺち、と手で頬を抑えられた。

「ストップ。今振り返らないで。多分顔真っ赤だから」
「・・・女かお前は」
「ぅ煩いッ背中押してくから、私の部屋に行こう」
「案外積極的だな」
「ち、違うっ!そういう意味じゃな」
「どういう意味だ?」
「・・・・・。」

もう知らないと無言の抵抗に、グレンはこみ上げる笑いを抑え、
促されるままにままに扉に手をかけた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


先程二人を寝かせた寝室を過ぎ、隣のジャックの部屋に入る。


ジャックの部屋に来るのは初めてだ。何とは無しに部屋を
見渡せば、机の上にオルゴールのであろうデザイン画が
置かれていた。

「次の作品か?」
「え?・・・あぁ、まだ全然手を着けてないんだけどね」

ようやくグレンの背中から離れたジャックは
いそいそと部屋を片づけながらどこか楽しげに答えた。

「そうか。・・・それは?」
「?・・・コレ?」

ジャックが手にしていたのは小さな子供用の衣服だ。


「少し前にね、子供の兄弟を拾ったんだ。」
「拾った?」
「そう。初めこそいろいろ大変だったけど、二人は今私の従者だよ」
「子供が従者なのか」
「ふふ、とても可愛いんだよ。兄のギルバートは責任感が強くてよく
 働いてくれるし、弟のヴィンセントもよく懐いてくれている」


どこか瞳に憂いの影を落として、それでも嬉しそうに
ジャックは小さな衣服を抱きしめた。

その様子を見てたグレンは、今の彼が満たされている事を知った。

「ジャック」
「ん、悪い。ちょっと二人の事を考えてしまった・・・
 あの子達の親はどうしているんだろう、とかね」

君が来てくれているのにすまない、とジャックは苦笑する。

「そんな顔をしなくてもいい。二人はお前を親としても慕っているんじゃ
 ないのか?・・・それに、お前も今が幸せなんだろう」

――だから、今はそんな表情をするな――

無意識の内に手が伸びていた。

ジャックの頬に触れ、柔らかな髪を撫でた。

「グレン・・・?」

ジャックは顔を上げてグレンを見た。
彼は優しさを湛えた瞳でジャックを見ていた。

頭を撫でて、そのまま抱き込むように身体を引き寄せる。
「――――っ!?」
突然引かれてよろける様にグレンの腕に納まった。
初めは驚いた様に腕の中におさまっていた彼だが、
次第に緊張を解き、身を預けるようになった。

「子供は親に甘えるものだ・・・慕われるというのはなかなか大変な事
 だがな」
「・・・今日のグレンは優しいね」
「いつもだろう」
「や、それはちょっと」
「・・・では意地悪な方がいいか?」
「そうは言ってな――」

顎に手をかけられ、上を向かされる。
呆けている顔にグレンのものが近づき、やがて視界には
何も見えなくなった。

「―――――ッン」

息苦しさに口づけをされている事に気付くと、
一気に顔が暑くなる。鼓動が速くなった。

それでも身体を引き離そうとは思わなかった。

胸が熱くなり、つられる様に目頭まで熱くなった。
グレンのコートを掴み、その手に力が籠る。

やがて離れた唇に名残惜しさが残る。

「・・・嫌だったか?」
「いいや、・・・嬉しいんだ、私は」
「なら、泣くな・・・ジャック」
「?」

グレンの指が目じりを拭った所で初めて気づく。
おや、と自分の指でも確認をする。

「・・・・幸せ過ぎて、溢れちゃったのかな」
「・・・だといいが」

苦笑するグレンを見て、ジャックも微笑む。





だけど、ホントは違う。
本当は、幸せ過ぎて、怖くなったんだ。





笑みの下で、ジャックは本音を言えなかった自分を静かに後悔した。





【二人】end




≫・・・やとくっついた( ̄* ̄ )
 一応CP通りになった・・・のか・・・?
 想像だけど、二人の掛け合いがすごく好きだ。