Funeral Wreath -363ページ目

【紡がれる旋律】

*グレン×ジャック









まばらに降り積もる雪はやがて一つの終焉を迎える。


積もる量が多いほどに長く形を保ち、

それでも果てにそれらは一つになるのだ。


儚くも必ず結ばれるようなそれらを、羨ましく思うのは

私だけだろうか?





がれる旋律】





――ここサブリエにも冬がやってきた。




冷える廊下を少々急ぎ足で進んでいく。

仕事故、客人を待たせてあった。


(客人・・・といはいっても)


つい口元が緩む。待っているのは友人だ。

客間が近づくとピアノの音が微かに響いてきた。


「・・・?」


初めて耳にするメロディーだった。

それはどこか哀愁を帯びながらも優しく響く旋律。

だが長くは続かず、模索するように途切れては形を変えて鳴りだす。

扉の前に辿り着くと、グレンは静かにその取っ手をまわした。


「ジャック」

「―――やぁグレン」


ピアノの前に立っていた男が振り向く。

にこやかな笑顔ではいるが少々困ったような顔だった。


「その旋律はお前が?」

「あぁ、でもなかなか纏まらなくてね・・・イメージが上手く形にならないんだ」

「さっき弾いていたのをもう一度弾けるか?」

「?・・・・うーん、こうだったかな・・・」


ジャックは椅子に座り鍵盤を鳴らした。自身はその傍らに立ち耳を澄ます。

――そう、このメロディーだ。

まだ伴奏や装飾音はシンプルなものだが完成されたものを聴いて

みたいと思った。


「・・・・雪のようだな」

「雪?・・・あぁ、そうだね・・・似たようなモノかな」

「似たような?」

「ん、恥かしいから聞いてくれるなよ」


何が恥かしいのかと思ったが彼は視線を鍵盤へ逸らしてしまう。


降り積もるほどに美しく儚い雪。

何所か切ない冬の景色が脳裏に描かれる。

その心情に似たモノは――


「――――――恋か」

「わあっ!」


思い当たった事が音となって零れた。

その瞬間にジャックが勢いよく立ちあがりグレンの口を塞ごうと

顔を赤くしながら手をばたばたと振りだす。


「そんなに慌てるような事ではなかろう」

「い、いやでも・・・・成人男子がそんな少女のみたいな・・・」

「お前がよく言う言葉だ。愛とは美しいものだと」

「・・・・・いざ自分がその立場に来ると案外恥かしいものだよ」


ジャックはピアノに項垂れながら恨めし気に視線だけ此方に向けてきた。

幼い子供の様な表情に微笑をすれば彼もつられて苦笑を零す。


「もう弾かないのか」

「いや、完成させるつもりだ」

「それなら――」


そこの旋律はもう少し展開した方がいいだの連符がいいだのと

話し合いながら、二人で旋律を紡いでいった。


その内外は雪が舞い始めていた。


「・・・冷えるか?」

「私はまだ大丈夫だよ」


暖炉の火を強くさせようかと思ったが、彼は作曲に夢中な様だ。

真剣な眼差しで白い5線紙にペンを走らせている。

窓の外では本格的に振りだした雪が街を白に染めつつあった。


降り積もる雪はいつか消えてしまっても一つになれる。

二人で積もらせたその旋律と想いも、決して無になる事が無いようにと

グレンは静かに願っていた。













――いつか消えてしまっても、最期に一つになれたなら――















【紡がれる律】end











色々散りばめました。上手く纏まらなかったですが

汲み取って頂ければ幸い。

彼らの紡いだ曲は、いずれ形にしたいのです。