【その背に手を】 | Funeral Wreath

【その背に手を】

*リクエスト①

*シャロン×ブレイク




伝えたい事がありました。

聞いて欲しい事がありました。

でもそれは、何より困難な事でした。



【そのに手を】



何時もの様にふらりと出掛けふらりと帰って来たその男は床に叩き落とされた。

この結果をある程度予測しつつも繰り返すのだから手に負えない。

つまりは常習犯という事だ。

「―――今度はどちらへ?」

「いえ、…あの」

見下ろす可憐な少女は今や般若の形相だ。

一般的且つ庶民的な紙で憐れなハエの如く床に叩きのめされた彼は言葉を濁す。

その態度にもどかしさを感じながらも、少女は深いため息をつき凶器を鞘に納めた。

「…事情が有るのは察しますが、無理をしないでください」

「スミマセンデシタ…」

ドレスの裾が床に付くのも厭わずに彼女はしゃがみ、頭を垂れる男の髪に触れた。

「――…シャロン…?」

「…何でもありませんわ」

指から白い髪が滑り落ちると、彼女はすっくと立ち上がり背を向けて歩き出す。

ずんずんと遠ざかるその背を暫し見つめ、はっとしたように男は少女を追いかけた。


長い廊下を闊歩する男女の空気は決して穏やかなものではない。

「何故付いてくるのですか?ブレイク」

「いやぁ、その…本当にすみませんデシタ」

「…言うからには今後、必ず、改めるのですよね?」

釘を刺すように言い返せば案の定ブレイクの顔は硬直した様に引きつった。

それを全く予想をしていなかった訳ではないがやはり少なからず哀しくなる。

歩む足を止め、シャロンはブレイクに向き合った。

ゆっくりと合わせた視線に彼が若干の緊張を帯びるのが見て取れた。

「――私は、貴方にもっと自分を大事にして欲しいだけなのですよ」

それだけが願いだと言う様に彼女の俯いた表情は感情を押し込めていた。

「私も…貴女が大事です」

「分かっています。でも貴方は本当に――」

長い間蓋を閉めていた言葉が今にも溢れ出してしまいそうだった。

しかし寸での所でそれは食い止められる。

自分のよりも遥かに大きく優しい手が頭にぽすんと乗せられていた。

柔らかい感触を楽しむ様に優しく髪を撫でたその手は少女の身体を引き寄せる。
「――ぶ、ブレイク――」

「申し訳ありませんが、今後も心配をかけないと言う事は約束できません」

直ぐ耳元での断言にシャロンは身を固くした。

一瞬熱くなった体温が音を立てて急速に冷えて行くような気さえした。

それでも本当は分かっているのだ。それが絶対的に無理だと言う事を。

自分の願いが彼の願いを叶える為の妨げになる事を。

「確かだと言える事がこんな事で申し訳ないですが…」

「いえ、いいのです」

苦く笑うブレイクの顔を見上げ、シャロンは首を振った。

叶わぬ願いなら自分が考え方を変えればいい。

いかに自分が彼の負担にならず、いかに彼の支えとなれるかと。

「レインズワースは私の大切なホームです」

「えぇ、勿論です」

嬉しくてのに何故だか切なくて、目の前の胸に顔を隠した。

見られて不味い顔をする訳でもないのだが何故だか隠さずに居られない。

頼った腕の中は酷く温かかった。この体温が何より大切なモノだった。

「―――君は、私の大切な家族です」

「―…えぇ、…えぇ当然ですわ――」

家族と形容された時点で分かっている事なのに何故だか胸が重い。

(そうじゃない、本当はそうでは無くて―――)

言葉にして突きつけられた事で自分の想いとの相違を実感してしまった。

言われた形がこれ程近い存在でありながら目の前に居る彼との距離は遠い。

「ではそろそろ、行きましょうか」

「そ、そうですわ。私もおばあ様の所へ行かないと…」

「女侯爵…そう言えば以前妹離れできぬ兄のようだと言われましたネー」

「あら、でしたらとっとと妹離れして下さいな『ザクス兄さん』」

何時までも離れられずにいた身体を押して笑顔を見せる。

「では今後、大切な家族の為に…何があっても命だけは持ち帰って下さい」

「――約束しましょう」

その場を別れて歩き出した時、彼女の顔はほんの一触れで涙を零しそうだった。

(分かってるのに、どうして―――)

只一方で、背を向け合った男が同様に表情を歪めていた事を彼女は知らない。




【そのに手を】―END―




どうしたら、この手が届く?







*なみ様へ

第三者が語りつつシャロンを主観に書いてみました。

拙い文章ですがお、お気に召しましたら幸いです。

ただもう少しブレイクの描写を上手く入れたかったのですが…

スミマセン;またシャロブレを書ける様に練習したいと思います!

リクエスト有難うございました!