【静寂】1 | Funeral Wreath

【静寂】1

*R18 予定。(続きの閲覧は自己責任で)

 




最近すごく、


すごく独りが寒いんだ




寂】1―雨―




―――その日はとても冷えていた。





部屋の窓から雨の降りしきるベザリウス家の薔薇園を眺める。

「なんとも・・・憂鬱な日だねえ・・・」

椅子に腰かけながら、コツンと窓に頭をもたれる。

「―マスター、こ、紅茶は如何ですか?」

振り向けば其処には小さな黒髪の従者の姿。

こちらを気遣うような面持ちで扉の前に立っていた。

「ああ、すまないねギルバート。お願いしようかな」

「はいっ」
笑顔で伝えれば嬉しそうに頷き、彼は廊下へ走って行った。

(かわいいなぁ)

従順で純粋。危うくも感じるが、最近年相応の表情を見せる

ようになりジャックは安堵していた。

何とはなしに再び窓の外に目を向けると、先程までは無かった

黒い人影。思わず立ちあがって窓を覗き込んだ。

「・・・・グレン・・・・?」



――――――――――――――――――――――――



「急にすまないな」

「いや、君ならいつだって大歓迎だよ」

テーブルの上にはカップが2つ。

彼の出迎時戻りかけたギルバートに頼んだのだ。

良い香りに心まで温まる様だった。

「さっきの子供・・・以前話していた子供か?」

「ギルバート?うん、そうだよ」

にこーっとジャックが表情を綻ばせる。

「・・・・大丈夫か?」

「へ?」
間の抜けた表情。だがグレンの目は真剣だった。

「な、何がだい」

「いや・・・外から見た時、辛そうに見えただけだ」

「そりゃ・・・私だって考え事をぐらいする時くらいあるさ」

「何を考えていた」

「・・・・・私にプライベートは無いのかい?」

苦笑で告げる。ジャックは冗談だったが、グレンの表情が曇った。

「・・・グレン・・・?」

「俺には、話せないか」

「そんなこと――」

「なら、悩んでいる事を隠すな」

真正面に見据えられて、普段饒舌な口が回らない。

「・・・・今日は外、寒いね」

苦しくなって出た言葉はそれだけだったが

席を立つきっかけになった。

「ジャック」

「窓、閉めるだけだよ」

換気用に開けていた小窓に歩み寄って窓を閉める。

雨はまだ降り続いており、自分の吐息で窓が曇った。

「・・・ただ、寒いって思ってただけだよ」

彼の表情は微かな笑みを湛えていたが、その視線は足元に

落ちた。グレンからの返事は無い。

あの時は本当にただ寒かっただけなのだ。

(でも、)

(「何処」が寒いかなんて)

「――何処が寒い」

「!」

びくっとして視線を上げると、背後に立つグレンの姿が窓にあった。

「ぐ、グレン」

「お前が寒いのは」

大きな温もりに抱きしめられる。肩に顔を埋められ、耳に声が直接響く。

回された手は服の上から心臓の辺りを触れた。

「――『此処』じゃないのか?」

ジャックは目を閉じた。

(嗚呼、・・・どうして彼には総て解ってしまうのか)

その手に自分の手を重ね、体重をグレンの胸に預ける。

「君は、いや・・・君のせいだよ」

「そうか」

グレンの口元には笑みが浮かんでいた。

「ねえグレン・・・・」

「なんだ」

「温めて」

重ねた手を口元に。

その手に口づけをしながら、上目遣いにガラスに映るグレンの

瞳を見つめた。ジャックの目は挑発的だった。

グレンは彼の髪を掬い、そこにキスを落とす。

「後悔するなよ」

「この身体が灰になったって、後悔なんかしないよ」

ジャックは振り返り、愛しい人の頬を両手で包む。

そうして引き寄せられるように、二人の唇が重なった。






【静寂】1―雨― end