いよいよ7月。受験生にとって「天王山」と呼ばれる過酷な夏休みが目前に迫ってきました。


​春に無事、目標だった同志社大学の門をくぐり、今ではすっかり大学生の顔になった息子の部屋には、あの狂気のような受験期を支えた参考書や問題集が山のように残されていました。ボロボロになるまでやり込んだ単語帳などは手元に残すにしても、過去問などの赤本はもう開くこともありません。

​「せっかくだし、これから夏本番を迎える後輩受験生たちに使ってもらおう」


​そう思い立ち、メルカリに出品し始めました。

すると夏休み前という絶好のタイミングに一斉に売れていくではありませんか。全国の受験生たちが、来るべき夏に向けて武器を揃え始めている熱気を画面越しに感じます。

​そして、最後に手にしたのが「同志社大学の赤本」です。

我が家にとって、これはただの過去問ではありません。「3教科全振り」という極端な生存戦略を貫き、ピンポイントで殴り込みをかけるための最も重要な攻略本でした。

​少しでも未来の同志社生たちの負担を減らしたい。高い参考書代に頭を悩ませる親御さんの助けになれば。そんな純粋な親心(あるいは受験を終えた親のちょっとしたお節介)から、相場よりもかなり思い切った「格安価格」で出品ボタンを押しました。

​数分後。

「ピローン♪」

​驚くべきスピードで売約済みの通知が鳴りました。

「おお、どこの受験生が買ってくれたんだろう!夏休み、頑張れよ!」

ホクホク顔で購入者の取引画面を開いた瞬間、私の美しい善意は一瞬にして凍りつきました。

​購入者のアカウント名:『〇〇ブックス@迅速発送』

プロフィール:「独自の仕入れルートで~」


​……業者やないかい。

​どうやら、私が「受験生のために」と身を切って設定した格安価格は、専用のツールか何かで張り付いていた転売業者のアラートを見事に鳴らしてしまったようです。

これからこの赤本は、彼らの手によって綺麗にクリーニングされ、本来の「相場価格(あるいはそれ以上)」へと華麗に錬金術され、再度出品されるのでしょう。

​なんとも言えない、このやるせない気持ち。


資本主義のリアルを、まさかメルカリの取引画面で見せつけられるとは思いませんでした。

​まあ、業者のフィルターを通したとしても、最終的にはどこかの、本当に必要としている受験生の手に渡るのだと自分を納得させるしかありません。業者の利益がしっかり乗せられた価格で買う羽目になる見知らぬ受験生よ、本当に申し訳ない。私のツメが甘かった。

​受験生の皆さん、そして親御さんたち。

フリマアプリに転がっている「相場通りの赤本」には、時折、私のようなお節介な親の行き場を失った善意が(業者の利益とともに)上乗せされている……かもしれません。

​理不尽な陣取りゲームは、入試本番だけでなく、参考書の調達戦からすでに始まっているようです。過酷な夏、どうか体調に気をつけて乗り切ってください。