たかが遺言、されど遺言 ~たかが・されどシリーズ その4~

 

今回は、「たかが、されどシリーズ」第3弾の遺言です。

しばらくお休みをいただいておりましたが、復帰いたしますニコニコ

 

前回、自筆証書遺言のお話をしましたね。

簡単に記載できて、コスパが良い反面、デメリットも多くありました。

 

今日は、

・自筆証書遺言保管制度

・公正証書遺言

についてお話してゆきましょう。

 

1 自筆証書遺言保管制度

自筆証書遺言保管制度は、2020年7月から始まった新しい制度で、自筆遺言のアレンジといった形になります。

 

メリットとしては

〇遺言内容を決めたり、書いたりするのは自分自身ですが、完成した遺言書を法務局に保管してもらうことができます。

〇保管してもらう際に、遺言書の形式面でのチェックを受けられるので、形式面で無効になってしまうリスクを防げます。

〇亡くなった際には、法務局から相続人(申請時に指定します)宛に、遺言書の存在を通知しますので、遺言書の見落としの心配がありません。

〇遺言書を実際に使用する際、裁判所の検認手続が不要なので、すぐに相続手続にとりかかることが可能です。

 

デメリットとしては、

〇法務局で内容面でのチェックを受けることができない。

 内容面については、法務局でアドバイスしてもらえないので、言葉の使い方ひとつで遺言書の解釈に争いが起きてしまう可能性もあります。

〇手続が面倒

 本人が必ず法務局に赴き手続をする必要があります。

 まず1回で全てOKという方はいないと思います。2,3回は法務局に通う必要があると思います。

〇遺言書の様式が決まっている

 必ずA4サイズで、上部や下部などの余白の大きさも決まっているなど、様式に制限があります。

 

なお、自筆証書遺言保管制度は、「遺言書保管官」というすごい名前の官吏が管理を司る、とされています。

申請に際しては、遺言書保管所(法務大臣の指定する法務局)に遺言者自らが出頭し、自分の生年月日や遺言書の作成日付、受遺者、遺言執行者の氏名・住所などを記載した申請書を提出しなければなりません。

 

自筆証書遺言でも上記のようなチェックを受ければ、様式不備や作成の真否をめぐって争いになることはかなり減るかもしれません。

しかし、この保管制度の利用では、従来の自筆証書遺言の持っていた「お手軽さ」が全くなくなってしまうので、果たしてこの制度を利用する人が増えるのかどうか、どれだけ浸透するのかは未知数です。

 

私だったら、自筆証書遺言のためにこんなに面倒な手続きをしなければならないんだったら、いっそのこと公正証書遺言を作ると思います。

 

2 公正証書遺言

さて、大本命の公正証書遺言です。

 

これは、証人と公証人の関与のもと作成される類型の遺言であり、多少の費用はかかりますが、最も確実性が高く相続人間の紛争を惹起するリスクも比較的低い方法です。

 

証人2名以上の立会のもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して遺言者及び証人に読み聞かせ(または閲覧させ)、遺言者と証人の署名・押印・公証人の署名・押印といった手続きを経て作られます。

 

分かったような分からないような感じですが、砕いて書くと流れとしてはこうです。

 

遺言を作成したい人が、まず公証役場に電話をします。大抵、事務の方と話を進めます。

 

余談ですが、この事務の方々がね・・・いやいやすごいんですよ。

スーパー事務員といいますか、長年勤めてる方が多いので、私たち司法書士も頼りにしていますし、教えていただくことばかりで頭が上がりません・・・。

 

話は戻りまして、遺言の依頼の流れです。

→まず、公証役場に来てくださいと言われますので、面談日時の予約をします。

それまでに持参する書類(戸籍や住民票、印鑑証明書など)を指示されるので、取得します。

→1回目に行くと、公証人からどのような遺言を作成したいのかを聞かれるので、色々と話します。(1時間程度)

 公証人が遺言書の案文を作成してくれます。

 FAXなどで内容を確認し、OKだったら遺言書作成の日を決めます。

→遺言書作成のため、公証役場へ赴きます。公証人が遺言書を読み上げ、内容に間違いがなければ遺言者が署名・押印の上、証人と公証人も署名、押印し、成立します。

 証人は、要件があり「未成年者」「相続人関係者」等、「公証人関係者」等は欠格とされています。

 証人の該当者がいない場合、依頼すれば公証役場で司法書士などを選んで、当日に呼んでおいてくれます。

 

 普通に一般の方が公証役場で遺言を作成する場合は上記の流れになります。

 

 司法書士や弁護士に依頼をしていただき、作成することも可能です。

 その場合は、司法書士や弁護士が公証役場とやり取りを行うので、遺言者ご本人は遺言書作成の日のみ公証役場に来ていただければよい流れになります。

 

 また、入院中や足が悪く歩けない方などでも、公証人は出張可能なので、遺言書を作成することができます。(別途、出張手当がかかります)

 遺言の場合、居住地ではなく、全国どこの公証役場でも作成できますので、「この公証人にお願いしたい!」という公証人のところで作成する方もいらっしゃいます。

 

 またまた長くなってきました。

 今日はこれくらいで切り上げ、公正証書遺言の続きはまた次回にしますね!爆笑