7月29日は「七福神の日」


七福神の「しち(7)ふ(2)く(9)」と読む語呂合わせから、煎餅(せんべい)造り100年を超える「幸(さいわい)煎餅」(前橋本店:前橋市千代田町4-19-3、銀座本店:中央区銀座5-14-1)が、同社の人気商品「七福神せんべい」「七福神あられ」「銀座七福神」を多くの人に味わってもらうため、七福神に因んで制定した。


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■「七福神」のスタディ


「恵比寿」(えびす)、「大黒天」(だいこくてん)、「毘沙門天」(びしゃもんてん)、「弁財天」(べんざいてん)、「福禄寿」(ふくろくじゅ)、「寿老人」(じゅろうじん)、「布袋」(ほてい)-----の七柱の神様で、福をもたらすとして日本で厚く信仰されている。

うち日本由来の神様は「恵比寿」のみで、「大黒天」「毘沙門天」「弁財天」はインドのヒンドゥー教由来の神様、「福禄寿」「寿老人」は中国の道教由来の神様、「布袋」は中国経由の仏教由来の神様。



□ 変遷


日本土着信仰の漁業の神様「恵比寿」は、8世紀初頭に成立した「古事記」「日本書紀」など日本神話に登場する、男神「伊邪那岐命」(イザナギノミコト)と女神「伊邪那美命」(イザナミノミコト)との男児「蛭子命」(ヒルコノミコト)を指す説と、同じく日本神話に登場する男神「大国主神」(オオヌシノカミ) と女神「神屋楯比売命」(カムヤタテヒメノミコト) との男児「事代主神」(コトシロヌシノカミ)を指す説がある。


インドのヒンドゥー教の主神・シヴァ神の化身「マハーカーラ神」と、日本神話に登場する「大国主神」(おおくにぬしのかみ)とを習合(融合)した「大黒天」を台所の神様として祀ることは、9世紀前半に日本天台宗開祖・最澄(伝教大師)が比叡山延暦寺で始めた。


これら「恵比寿」「大黒天」に加えて、平安時代(9~12世紀)にヒンドゥー教の富・財宝神「クベーラ(別名ヴァイシュラヴァナ)神」に由来する三柱-----「恵比寿」「大黒天」「毘沙門天」をセットとして信仰されることが起こった。
ところが平安時代末期~鎌倉時代初期の12世紀後半に、ヒンドゥー教の女神「サラスヴァティー神」に由来する近江竹生島の「弁財天様(弁天様)」信仰が盛んになると、「毘沙門天」ではなく「恵比寿」「大黒天」「弁財天」の三柱をセットとする人気も上がって行った。


室町時代末期(14世紀初頭)の近畿地方では、仏教の「布袋尊」、道教の「福禄寿」「寿老人」も中国から入って来て夫々に知られるようになり、それらをまとめて七柱の神仏のセットができた。


江戸時代にはほぼ現在の顔ぶれに定まったものの、その後も数多くのバリエーションが生み出され、例えば、「寿老人」の代わりに「稲荷」「虚空蔵」「吉祥天」「宇賀神(男弁財天)」「不動明王」「愛染明王」、果ては「達磨」「お多福」「福助」などが入れられることがあった。



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□ 各論


▽ 恵比寿(恵比須)

日本固有の神様。「大漁追福」漁業の神。


▽ 大黒天

インドのヒンドゥー教のマハーカーラ神と日本固有の「大国主神」との習合。「大黒柱」と現わされているように「五穀豊穣」農業の神。


▽ 毘沙門天(多聞天)

ヒンドゥー教のクベーラ神に由来する「福徳増進」の神であったが、仏教に取り入れられてからは「持国天」「増長天」「広目天」と共に四天王の一尊に数えられる武神(戦い/勝負事の神)となった。


▽ 弁財天(弁才天)

ヒンドゥー教の女神・サラスヴァティー神。七福神の中の紅一点。仏教に取り入れられてからは音楽・弁才・財福など徳のある天女に選ばれた。


▽ 福禄寿

道教で強く希求される「三徳」、即ち幸福(子宝)・封禄(財産)・長寿(健康)を具現化した神。
道教の神で南極老人星(カノープス)の化身で「寿老人」と同体異名の神とされたり、宋の道士・天南星の化身とされたりすることもある。
背が低く長頭で長い髭を生やし、杖に経巻を結び、鶴を伴っている。


▽ 寿老人(寿老神)

道教の神で南極老人星(カノープス)の化身で、「福禄寿」と同体異名の神とされることもある。
不死の霊薬を含む瓢箪を運び、長寿と自然の調和を象徴する牡鹿を従え、手には不老長寿の桃を持っている。


▽ 布袋尊

中国王朝の唐代末期~五代の明州(現在の中国浙江省寧波市)に実在したといわれる仏教の禅僧。その大きな頭陀袋を背負った太鼓腹の風貌が好まれ、袋から財を出し与えてくれたと言う。弥勒菩薩の化身との説から、日本でも黄檗宗大本山萬福寺で布袋形の弥勒仏像を見ることができる。


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□ 東京下町の七福神


▽ 浅草名所七福神

恵比寿 ・・・「浅草神社」      (台東区浅草2-3-1)    
大黒天 ・・・「浅草寺」        (台東区浅草2-3-1)    
毘沙門天・・・「本龍院」(別称「待乳山聖天(まつちやましょうでん)」)
                                      (台東区浅草7-4-1)    
福禄寿 ・・・「矢先稲荷神社」(台東区松が谷2-14-1)
福禄寿 ・・・「今戸神社」      (台東区今戸1-5-22)
布袋尊 ・・・「橋場寺」(別称「橋場不動院」)
                                      (台東区橋場2-14-19)    
寿老人  ・・・「石浜神社」      (荒川区南千住3-28-58)
寿老人  ・・・「鷲(おおとり)神社」 
                         (台東区千束3-18-7)    
弁財天  ・・・「吉原神社」      (台東区千束3-20-2)


▽ 下谷七福神

毘沙門天・・・「法昌寺」       (台東区下谷2-10-6)
大黒天 ・・・「英信寺」        (台東区下谷2-5-14)
福禄寿 ・・・「真源寺」(別称「入谷鬼子母神」)
                     (台東区下谷1-12-16)
寿老人 ・・・「元三島神社」 (台東区根岸1-7-11)
弁財天 ・・・「弁天院」        (台東区竜泉1-15-9)
恵比寿 ・・・「正宝院」(別称「飛不動尊」)
                                  (台東区竜泉3-11-11)
布袋尊 ・・・「寿永寺」        (台東区三ノ輪1-22-15)


▽ 谷中七福神

弁財天・・・「寛永寺弁天堂」(台東区上野公園2-1)
大黒天・・・「寛永寺護国院」(台東区上野公園10-18)
毘沙門天・・・「天王寺」       (台東区谷中7-14-8)
寿老人 ・・・「長安寺」    (台東区谷中5-2-22)
恵比寿 ・・・「青雲寺」    (荒川区西日暮里3-6-4)
布袋尊  ・・・「修性院」    (荒川区西日暮里3-7-12)
福禄寿 ・・・「東覚寺」    (北区田端2-7-3)


▽ 小石川七福神

寿老人  ・・・「宗慶寺」    (台東区下谷2-14-5)
福禄寿 ・・・「東京ドーム」  (文京区後楽1-3-61)
毘沙門天・・・「源覚寺」(別称「こんにゃくえんま」)
                       (文京区小石川2-23-14)
大黒天 ・・・「福聚院」    (文京区小石川3-2-23)
布袋尊 ・・・「真珠院」    (文京区小石川3-7-4)
弁財天 ・・・「極楽水」    (文京区小石川4-16-13「小石川パークタワー」)
(女宇賀神)
男弁財天・・・「徳雲寺」   (文京区小日向4-4-1)
(男宇賀神)
恵比寿 ・・・「深光寺」    (文京区小日向4-9-5)


▽ 隅田川七福神

毘沙門天・・・「多聞寺」   (墨田区墨田5-31-13)
寿老人  ・・・「白鬚神社」  (墨田区東向島3-5-2)
福禄寿 ・・・「向島百花園」 (墨田区東向島3-18-3)
弁財天 ・・・「長命寺」    (墨田区向島5-4-4)
布袋尊 ・・・「弘福(禅)寺」 (墨田区向島5-3-2)
恵比寿 ・・・「三囲(みめぐり)神社」
                     (墨田区向島2-5-17)
大黒天 ・・・「三囲神社」     (墨田区向島2-5-17)


▽ 日本橋七福神

恵比寿 ・・・「椙森(すぎのもり)神社」(別称「椙森稲荷」)
                    (中央区日本橋堀留町1-10-2)
寿老人  ・・・「笠間稲荷神社東京別社」
                    (中央区日本橋浜町2-11-6)
毘沙門天・・・「末廣神社」    (中央区日本橋人形町2-25-20)
大黒天 ・・・「松島神社」(別称「大鳥神社」)     
                                     (中央区日本橋人形町2-15-2)
布袋尊 ・・・「茶の木神社」  (中央区日本橋人形町1-12-10)
弁財天 ・・・「水天宮」        (中央区日本橋蛎殻町2-4-1)
弁財天 ・・・「小網神社」     (中央区日本橋小網町16-23)
福禄寿 ・・・「小網神社」     (中央区日本橋小網町16-23)