BS朝日スペシャルドラマ「オリンピックの身代金」

 
【初放送】

テレビ朝日 第1部2013/11/30、第2部12/01

【再放送 第1部・第2部一挙放送】

BS朝日 2015/3/6(金)18:25~22:48、2016/2/5(金)17:30~21:54


  ビデオを撮って初めて観た。

☆ 戦後の復興を目指して来た日本が、一気に再び列強に並ぶ "先進一等国"の評価を獲得するチャンスが到来した。それが1964年の「東京オリンピック」開催だった。
突貫土木工事が進み、交通の利便性が飛躍的に発展を遂げる一方、自然と歴史が消え失せて行った。
そんな時に、1962~63年のテロ「草加次郎事件」が引き起こされた。

☆ 真っ只中の当時、私は北陸の高校生(1963~65年)。
想像だにできなかったのだが、その12年後(1977年)から私は、「草加」を通過する東武線で通勤するサラリーマンとなり、更に2007年から、「草加次郎事件」が相次いで勃発した、地下鉄銀座線沿線に出没する年金生活者となっている。

☆ テロリズムは決して許されるものではないが、2020年に再び「東京オリンピック」開催しようとしている日本が、ハコモノ行政と国家の威信(見栄)を優先する余り、自然と歴史を破壊したり、大震災の復興を疎かにしたりしないよう、衆人環視を緩めてはならない。







【あらすじ】


東京オリンピック開催間近の1964年(昭和39年)8月15日、渋谷区千駄ケ谷・国立競技場近くの東京オリンピックの警備本部幕僚長・須賀修二郎の自宅敷地内で、
更に1週間後の8月22日、今度は中野区中野四丁目の警察学校(旧・陸軍中野学校)の南宿舎食堂で、
連続してダイナマイト爆発音と共に火の手が上がる。

だが、2件とも報道されず、発生するやいなや、現場に駆けつけた警察官だけでなく警察内部全体に厳しい箝口(かんこう)令が敷かれる。
記者のみならず、なぜ捜査陣にさえも情報を伏せるのか?
オリンピック開催前における国家の一大事であり、偏に国民に対して不安を抱かせまいとしたからだった。


*


第二子の出産を控え松戸市の常盤平団地に引っ越した、警視庁捜査一課の刑事・落合昌夫が属する捜査第五係の面々に召集がかかる。

差出人名「草加次郎」(※脚注)を使った連続爆破事件の犯人から、"東京オリンピックは要らない"との爆破予告状が届いていた・・・"東京オリンピックの開催を妨害します 近日中にそれを証明します" "もう一度ハナビをあげます 追って連絡します"などと。・・・ことが、
一切を最高機密とする旨を申し渡された上で、明かされる。

予告状に貼られた活字は、「月刊無線と科学」1963年7月号から切り抜いていることが判明。

その後も爆破は続く。外務省東京オリンピック対策室、日央建設本社、東京モノレール橋脚、大羽会、警視総監、そしてオリンピック開催身代金8000万円。


*



事件の少し前の7月中旬、東京大学大学院生の島崎国男の元に、出稼ぎで東京オリンピックの道路工事に携わっていた異父兄・初男の訃報がもたらされる。
故郷の秋田県から母や義姉らが上京する余裕はないため、国男が代わって荼毘(だび)に立ち会い、遺骨を故郷の秋田(東大曲駅下車の谷郷村)へ持ち帰ることになる。

15歳年上の兄・初男は、一家の稼ぎ手として、国男が幼い頃から出稼ぎで1年の半分は家を空けていた。
また国男自身が母親の浮気でできた"種ちがい"の子であるという感情の隔たりもあり、遺体と対面しても家族という実感は希薄だった。
久しぶりに帰った故郷は昔と変わらず貧しく、東京の生活に慣れていた国男はその格差に衝撃を受ける。


*


葬儀を終え東京へ戻った国男は、兄が生前働いていた工事請負業者の飯場で、ひと夏働くことを決意する。
大学院でマルクス経済学を学ぶ国男は、日本で近くプロレタリア革命が起こると確信しており、その時にはプロレタリアの実態を知るプロレタリアートの側でいたいとの願望があった。


慣れない土方作業に励む国男だったが、過酷な肉体労働の中、別の飯場を仕切るヤクザ者に目を付けられ、花札のイカサマ賭博で負け借金を負ってしまう。
工事現場は終始、工期の遅れを責められ、連日、朝の8時から夜の10時まで、時には午前2時まで通しで16時間も働き詰めの状態だった。
そして現場には、暗黙のヒエラルキー(階層)が存在し、出稼ぎ人夫たちが疲労感を忘れ仕事を続けるためにヒロポン(覚醒剤)に手を出している実態に直面する。

国男は、何とプロレタリアートの生活実態を正確に実体験しようと、自身もヒロポンに手を出してしまう。
そんな中の或る日、1人の出稼ぎ人夫が粗悪なヒロポンの過剰摂取で死亡し、兄・初男の直接の死因も同様の過剰摂取によるものだったことが分かる。


*


"五輪景気"に沸く東京の光の部分と、その裏側にある搾取され続ける労務者の影の部分。更に貧困に喘ぐ地方の現状。社会の大きな格差を身を持って実感した国男。
今の日本にオリンピックを開催する資格はない、一極集中の東京だけが富と繁栄を享受するのは断じて許されない、戦う術を知らないプロレタリアートの代わりに誰かが阻止しなければならない、という思いを一層強くして行くのだった。

工事で知り合った発破業者の火薬庫からダイナマイトを盗むことに成功した国男は、爆弾のタイマーの作り方を調べ、爆破を実行に移す。
そして、報道されないという確信を抱いてからは、より冷静さを保ちながら、ヒロポンの影響もあり益々意気軒昂となって行く。


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秋田へ帰郷した際に出会った同郷の村田留吉というスリと再会した国男は、自身の考えと二度の爆破事件を起こしたことを告白し、オリンピックを人質に一緒に国から金を取らないかと持ちかける。
村田はオリンピック妨害については拒んだが、国から身代金を取るという発想に共鳴する。

行動を共にするうち、村田は国男を実の息子のように感じ始めているのだった。



*


一方、警察捜査陣は、「草加次郎」からの爆破予告状に戦々恐々としながらも、捜査一課の刑事たちが一歩一歩確実に島崎国男へと迫って行く。
だが、島崎を国体を揺るがす思想犯だと考える公安部と刑事部は、捜査方針で激しく対立する。



*

 
戦後最大の国家的イベント「東京オリンピック1964」を前に、国家の威信をかけた警察と謎の犯人との息詰まる対決が始まった !

「東京オリンピック」の"大義"・・・暴力団さえ抗争活動を休止するような・・・とは、何であったのか ?





 「草加次郎事件」

1962年から1963年の間に、10数件に亘って「草加次郎」名での爆破・脅迫・狙撃などのテロ事件が相次いだ。
警視庁は延べ1万9000人の捜査員を投入し、火薬・爆弾マニアなど約9600人をリストアップしたが、犯人を特定することはできなかった。

1978年9月5日に公訴時効が成立。戦後日本の犯罪史に名を残す未解決事件となった。


1962年
11月04日、島倉千代子に爆発物郵送、事務員が負傷。
11月13日、港区麻布に住むバーホステスに爆発物を郵送、未遂。
11月20日、有楽町ニュー東宝劇場で爆発、観客が負傷。
11月26日、有楽町日比谷劇場で爆発、負傷者なし。指紋が検出。
11月29日、世田谷区の電話ボックスで爆発、利用者が負傷。
12月12日、浅草寺境内で爆発、警備員が負傷。
1963年
05月09日~7月22日、吉永小百合に脅迫状6通。
07月15日、上野公園で屋台店主を狙撃、重傷。
07月24日~08月14日、渋谷東横デパートで爆発、負傷者はなし。屋上で爆発、負傷者なし。店長宛に爆発物郵送、事務員が負傷。
09月05日、地下鉄銀座線車内で爆発、10人が重軽傷。
09月06日、吉永小百合宅に脅迫状、100万円要求。鰐淵晴子や桑野みゆき宅に弾丸を同封した脅迫状、100万円要求。

1978年
09月05日、公訴時効成立。




【スタッフ】


原作: 奥田英朗「オリンピックの身代金」

2008年11月、角川グループパブリッシング。
2009年「第43回吉川英治文学賞」受賞。
2011年9月、角川文庫。
2014年11月、講談社文庫。

Amazonで購入



監督:藤田明二

脚本: 東本陽七、藤田淳志
脚本協力: 七橋斗志夫、渡辺謙作

音楽: 沢田完

制作協力: 角川映画
制作著作: テレビ朝日


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【ロケ協力】


国立競技場、UR都市機構、東京ロケーションボックス、新宿区文化観光課、
八王子フィルムコミッション、かわさきMOVEART応援隊、
パートナーシップきさらづ、常総市フィルムコミッション推進室、
愛知県、名古屋市、名古屋観光コンベンションビューロー、
滋賀ロケーションオフィス、JR西日本ロケーションサービス、
北九州市消防局、北九州フィルムコミッション、北九州モノレール、飛鷹鉄工所、小玉商店、九州旅客鉄道、春の町商店組合、
昭和電工、コニカミノルタサイエンスドーム、マイク・スタントマン・チーム、エムズバンテック、プリンスガレージかとり、バラクーダ、DATSUN、オートメディック、富士映画、マエダオート、航空科学博物館、car shop GOOD、他。





【主なキャスト】


松山ケンイチ: 島崎国男・・・東京大学経済学部大学院生・マルクス主義者、秋田出身・文京区小貫在住
[幼少期 横山陽紀]

相島一之: 島崎初男・・・国男の異父兄、出稼ぎ労働者
[青年期:國重光司]

原沙知絵: 島崎清子・・・初男の妻

草笛光子: 島崎梅子・・・国男・初男の祖母


桐谷健太: 藪谷潔・・・東京大学学生・学生運動リーダー

柄本佑: 山本・・・学生運動リーダー格

江角マキコ: 浜野敏子・・・東京大学経済学部教授


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國村隼: 大羽源三・・・暴力団「大羽会」会長

泉谷しげる: キン・・・荒川区・朝鮮人集落の手配師・裏社会の面倒見、秋田出身

六平直政: 樋口武雄・・・オリエント土木の人夫、大羽会準構成員

石田卓也: 寺田義男・・・樋口の手下、大羽会構成員


笹野高史: 村田留吉・・・前科5犯の夜行列車専門スリ師


田中哲司: 北野清・・・大田区の北野火藥社長、ダイナマイト盗難被害者、ホモっ気

柄本明: 山田晋一・・・日央建設の孫請け・人夫斡旋会社の山晋興業社長、ダイナマイト顧客、秋田出身

渡辺大: 米村繁・・・山晋興業の人夫
田中要次: 塩野・・・山晋興業人夫


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警視庁

刑事部捜査第一課捜査第五係

竹野内豊: 落合昌夫・・・警部補
[少年期 丸山瀬南]

斎藤工: 岩村傑・・・刑事・落合の相棒 

飯田基祐: 沢野久雄・・・巡査部長
遠藤要: 倉橋哲男・・・巡査部長
小澤征悦: 仁井薫・・・警部補
中本賢: 森拓朗・・・警部補
光石研: 宮下大吉・・・捜査第五係係長・警部
大杉漣: 田中正治・・・捜査第一課長代理
沢村一樹: 玉利実・・・捜査第一課長


岸部一徳: 須賀修一郎・・・警務部長・東京オリンピック最高警備本部幕僚長

西岡德馬・・・ 警備部第一機動隊分隊長

鈴木一真: 矢野進・・・公安部公安第一課刑事


唐沢寿明: 佐藤茂雄・・・上野警察署スリ担当刑事

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黒木メイサ: 落合有美・・・落合昌夫の妹、東大経済学部学生
[幼少期 平澤宏々路]
吹石一恵: 落合晴美・・・落合昌夫の妻、秋田出身


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原田龍二: 須賀勝・・・外務省東京オリンピック対策委員、須賀家長男

速水もこみち: 須賀忠・・・中央テレビ・音楽ディレクター、須賀家次男、東大経済学部卒・落合有美に失恋
 
天海祐希: 笠原栄子・・・中央テレビ報道局局員

榮倉奈々: 月丘ミドリ・・・須賀忠の恋人、モデル・クラブホステス