昨日3/15(日)、第39回全日本競歩/ 能美大会で、鈴木雄介選手(27歳、富士通所属)が、20km競歩で1時間16分36秒の世界新記録を樹立して優勝した。従来の記録は、フランスのヨアン・ディニが今月3/8(日に出した1時間17分2秒だった。因みに、陸上の五輪・世界選手権の実施種目で日本選手が世界記録を更新したのは、2001年ベルリン・マラソンの高橋尚子選手以来。男子の日本選手では1965年に英国マラソン大会で重松森雄選手がマークして以来、50年振りの快挙だ。


★ 鈴木雄介選手の談話

 

10km過ぎで "いける!!" と思ったが、自分でもびっくり。まさか世界記録までいけるとは思っていなかった。以前より確実にフォームはキレイになって来ている。夢のひとつが叶った。天候も味方につき、地元の声援も力になった。記録に慢心せず、ここから一段階上げて、今年の世界選手権と来年のリオ五輪で金メダルを取りたい。


毎日新聞の報道2015/3/15


鈴木が所属する富士通をはじめ、近年は競歩選手を採用する実業団チームが増加。複数の選手や指導者を抱えるチームも出て来た。ロシアなど、専門の指導者を揃える長期間の合宿も行って強化を進める強豪国に近づきつつある。マラソンと違ってアフリカ勢の進出がまだ少ない競歩は、日本が五輪でメダルを期待できる数少ない種目。ただ日本陸上競技連盟の小坂忠広氏は、日本の強みにジュニア選手層の厚さを挙げる。2001年から全国高校総体で競歩が実施され、国体を含めて高校年代から競い合える環境が生まれた。だが、「今回の記録はすごいが、まだメダルを狙える位置に立っただけ」と慎重だ。歩型には常にどちらかの足が接地していなければならないなどの規則があり、国際大会はチェックする審判員の厳しい目との戦いでもある。五輪など夏場のレースは、心理戦を含めた過酷な消耗戦も強いられる。鈴木選手には今後、世界記録保持者として「速さ」に加えて「強さ」も求められる。


★ 鈴木雄介選手の略歴


1988/1/2、石川県能美郡辰口町(現・能美市)生まれ。27歳。
好きな食べ物: トンカツ。趣味: バスケットボールとサッカー。170cm、57kg。


辰口町立辰口中学校時代、陸上競技を本格的に始め競歩選手としてスタートした。中学校時代には3km競歩で12分42秒34、5km競歩で21分48秒49の中学最高記録をそれぞれマークした。

石川県内有数の進学校・県立小松高校に進学。
2004年、アジアジュニア陸上競技選手権大会、2005年、世界ユース陸上競技選手権大会にそれぞれ10km競歩で出場し、全国高校総合体育大会でも優勝した。

2006年、順天堂大学へ進学。同年の第11回世界ジュニア陸上競技選手権(北京)の10km競歩で銅メダルを獲得した。

2010年、富士通に入社。同年の第16回アジア競技大会(広州)の20km競歩5位入賞。

2011年、第13回世界陸上競技選手権(韓国・大邱)で、20km競歩に出場し15㎞まで先頭を走る積極的なレースを進めて、終盤失速したものの1時間21分39秒で8位入賞。日本陸上競技連盟の選考基準を満たしたことにより、ロンドンオリンピック日本代表選手に内定。

しかし2012年、第30回オリンピックロンドン大会の本番では20km競歩1時間23分53秒で36位に終わった。

2013年、第96回日本選手権20km競歩で1時間19分02秒を記録して2年ぶり2度目の優勝を飾り、柳澤哲が保持していた同種目の日本記録を13年ぶりに更新。

2014年、アジア競技大会(韓国・仁川)では20km1時間20分44秒で銀メダルを獲得。

五輪と世界選手権のメダリストはまだ出ていないが、19歳以下で競う世界ジュニア選手権では2014年、男子1万メートル競歩で松永大介(東洋大)が金メダルを獲得。17歳以下の世界ユース選手権も一昨年に日本勢が制した。
日本では地味な競技だが、同種目では2014年世界ランク1位となり、日本陸連の強化指定選手としては最高の「ゴールドアスリート」にもなっている。

2015年2月、日本選手権(神戸)で出した1時間18分13秒の自己記録も大幅に更新。この時は、1時間18分3秒の日本新記録をマークした高橋英輝(岩手大)に敗れて2位だった。




3年前の2012年時点では------


鈴木雄介(24歳、富士通)、谷井孝行(29歳、佐川急便)の2人の日本代表選手をロンドンに送 り込んだ「競歩石川」。これまで延べ11人の五輪ウオーカーを生んだ「王国」も、近年は次代を担う有望株が現れず、衰退の危機を迎えていた。

1964年の東京五輪に出場した齊藤和夫氏(詳細は後出) から数えて「第3世代」に当たる鈴木・谷井の両選手。王国の未来は2人の飛躍に掛かっている。「長く続いた歴史が途切れるかもしれない。ピンチだ」。石川県勢としてバルセロナ、アトランタ両五輪に出場した小坂部長は危機感を隠さなかった。  


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過去の代表的競歩選手の歩み------


我々の世代では、競歩と言えば、斎藤和夫さんだった。
私の実家が在ったJR最寄駅・森本駅の隣が津幡駅なので、親近感が有った。


故・斎藤和夫

2006/6/2、日本陸連元競歩部強化部長で技術指導コーチだった斎藤和夫氏が、心不全のため死去、63歳。
斎藤氏は、私の4歳年上の1943年石川県津幡町潟端生まれ。斎藤氏に始まった競歩石川の歩みは半世紀近くに及ぶ。「第1世代」として1964年東京、1968年メキシコと2大会連続で50km競歩五輪代表として出場。東京大会では土砂降りの雨の中、甲州街道のコースをひた歩きメキシコ大会では暑さと高地の中で健闘し17位に入った。また当時、世界ランキング10位以内の好タイムをマークするなど「日本人もやれば出来る」との信念を抱きつつ、同氏は引退した。
引退後は後進の指導に努める。1982
年から12年間、日本陸連の競歩強化部長を務め、自らの経験活かし、多くの若手選手を強豪メキシコ高地合宿に派遣した。当時、競歩を専門に指導するコーチは少なく、齊藤氏の下に全国から選手が集まった。小坂氏もその一人で「元五輪選手に指導してほしい」と和歌山から石川へ移り住んだ程だ。  
90年代は、齊藤氏の教え子たち「第2世代」が大活躍した。ジュニア時代から育成に当たった池島大介選手、板倉美紀選手を五輪選手として輩出。競歩ブロックではただ一人の技術指導コーチとして競歩界の発展に尽力。91年東京世界陸上で今村文男選手50km7位入賞など数多くの成果を収めた。


今村文男氏

1966/11/5千葉県柏市生まれ。
千葉県柏市立柏中学校、八千代松陰高校、東洋大学、富士通。
東洋大学時代は日本インカレ3位、1998年第13回全日本競歩根上大会男子30kmで初優勝を果たす。 卒業後は企業に入社し競技を続けていたが企業が倒産のため、一時期アルバイト生活をしながら競技を続けていた。その後、1991年に富士通に入社。
1991年ワールドカップ競歩(アメリカ・サンノゼ)50km競歩で日本人としては初の3時間台となる3時間59分18秒で12位となる。 その年の1991年世界陸上選手権50km競歩では日本競歩史上初の入賞(7位)を果たした。その後、1992年バルセロナオリンピック、1993年世界陸上選手権、1995年世界陸上選手権と連続して代表に選ばれるが良い成績を収められず、1996年アトランタオリンピックは最終選考会で小坂忠広選手に破れ代表を逃した。1997年、強豪スペインの合宿に参加し、1980年モスクワオリンピック50km競歩銀メダリストのジョルジ・ロパルトコーチのもとで開花。 1997年世界陸上選手権50km競歩では参加選手中ただ一人自己記録(日本記録)の3時間50分27秒で6位入賞を果たした(日本の競歩史上最高順位)。1998年日本陸上競技選手権50km競歩では日本人初となる3時間50分の壁を突破する3時間49分38秒をマーク。50km競歩では6度の日本記録を更新した。その後も1999年世界陸上選手権、2000年シドニーオリンピック、2001年世界陸上選手権、2003年世界陸上選手権と日本代表で出場。 世界陸上選手権日本代表7回は日本選手最多である。2004年アテネオリンピック最終選考会4位。
現役を引退後はコーチングに専念し、2007年には国際陸連競歩委員会委員に日本人として初めて選出された。2008年日本陸連競歩部長に就任。


石田(旧姓・池島)大介氏

1975/1/30石川県生まれ。
石川県立七尾工業高校、日本大学、長谷川体育施設。
競歩各種の日本ジュニア記録、日本学生最高記録を樹立するなど、名実ともに日本を代表する競歩選手として長く活躍。1996年アトランタオリンピック、2000年シドニーオリンピック、1995年世界陸上競技選手権、1999年世界陸上競技選手権などにも日本代表として出場し、1999年ユニバーシアードでは銅メダルを獲得した。1998年全日本50km競歩高畠大会の男子20km競歩で日本選手初の1時間20分突破となる1時間19分50秒をマークした。
現在は、石川県立津幡高校教員。


板倉美紀氏

1975/8/1石川県羽咋郡志賀町生まれ。
金沢高校、順天堂大学。
中学1年から陸上競技を始める。当時は中距離走選手。顧問教諭の勧めで中学2年から競歩に取り組み才能が開花。1992年バルセロナオリンピック日本代表選手に選ばれ、同年9月にソウルで行なわれた世界ジュニア陸上選手権では銅メダルを獲得したが、この年の12月に練習中に交通事故に遭い重傷を負う。しかし、1993年には競技会に復帰した。
金沢学院大学教務助手を経て、2009年より石川県立大聖寺高校講師、2009年に能美市内の会社員と結婚。