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「体感!古事記 ~日本はじまりの物語」
NHK-G再放送12/7(日)2:20~3:05、本放送11/9(日)13:05~13:50
【出演】佐野史郎(俳優)、潮見裕正(劇団東俳関西)
【語り】杉浦圭子
【監修】三浦佑之(立正大学文学部文学研究科長・教授)
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現存する日本最古の歴史書「古事記」。
この「古事記」を前例のない手法で見せる
展覧会「大古事記展」[12/14(日)まで奈良県立美術館] が開催中。
巨匠の絵画、考古遺物や工芸品、本居宣長直筆の「古事記伝」草稿本など---「古事記」の世界を体感する仕掛けがダイナミックに展開されている。
番組では、佐野史郎の扮する古代人が、「古事記」の物語・神話の意味を分かり易く紐解きながら、目・耳・体をフルに使って古代世界を体感してもらうという狙い。
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「古事記」
成立時期
奈良時代=平城京712年(和銅5年)に、文官の太朝臣安萬侶 [おほのあそみ・やすまろ、太安万侶(おおの・やすまろ)とも表記。生年不詳~723年(養老7年)] が編纂し、
元明天皇 [661年(斉明7)~721年(養老5年)、天智天皇の第四皇女、第43代天皇=女帝[在位:707年(慶雲4年)~715年(和銅8年)] に献上された。従って成立年は8世紀初め。
内容
神代における天地(アメツチ)の始まり~推古天皇期の様々な出来事(神話・伝説を含む)が記されている。紀伝体、変体漢文。
前半は神々がこの地に登場した話、後半は天皇の争い事や系譜。数多くの歌謡も含む。
天皇と祭神を結びつけ、天皇の権力の正統性を証明しようとした。
時代背景
645年(皇極4年)、「乙巳の変」(いっしのへん、「大化の改新」前のクーデター)で、中大兄皇子(天智天皇)は蘇我入鹿(いるか)を暗殺する。 これに抗議したその父・蝦夷(えみし)は大邸宅に放火し自害した。 この時に朝廷の歴史書を保管していた書庫までもが炎上する。 「天皇記」など数多くの歴史書は焼失、難を逃れたと言われた「国記」も現存しない。
天智天皇は、「白村江の戦い」で唐+新羅の連合に敗北し、史書編纂の余裕はなかった。
「国記」に変わる史書---「古事記」・「日本書紀」の編纂が、天智天皇の弟・天武天皇の命により行われる。
舎人(とねり)だった稗田阿礼が記憶(誦習)していた「帝皇日継」(天皇の系譜)と「先代旧辞」(古い伝承)を元に、太安万侶が書き記し編纂した。
但し、「古事記」の原本もまた現存せず、写本のみが伝わる(南北朝時代の写本が最古)。
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★ 「古事記」の概要
■ 上巻(かみつまき)
・・・神話(神の誕生~国土生成~天孫降臨)。
天地初発・・・混沌した状態から世界が形成。
神世七代・・・7代の神が交代。その最後にイザナギ(伊邪那岐命)、イザナミ(伊邪那美)がそれぞれ誕生。
国生み・・・高天原(天界)から葦原中津国(地界)に降臨、イザナギ(伊邪那岐命)とイザナミ(伊邪那美)は日本初の夫婦(但し兄妹の近親結婚)、大八島国(日本列島)、山の神・海の神なども産み落とす。
神生み・・・火の神を産んでイザナミは火傷が元で死に、出雲国と伯耆国の堺・比婆山(現・島根県安来市)に葬られた。
黄泉(よみ)の国訪問・・・イザナミを忘れられないイザナキは黄泉の国(死界)へと向かって連れ戻そうとするが失敗。国産みは未完のまま。
イザナキの禊(みそぎ)・・・イザナキは黄泉の国で汚れた体を河で清めると、アマテラスオオミノカミ(天照大御神=天)・ツクヨミノミコト(月読命=夜)・スサノヲノミコト(須佐之男命=海)の3神が誕生。乱暴なスサノオは海を守らず反逆を疑われる。
天岩屋戸・・・スサノオの乱暴に業を煮やしたアマテラスは、天岩屋に閉じ籠り世界は闇。アマテラスを外に出そうと八百万の神々は腐心。うちアメノウズメ(天宇受賣命)が色っぽく踊ると気になったアマテラスが覗き、アメノタヂカラヲ(天手力男神)が手を取って外に出すと、世界に光が戻る。
この天岩屋神話は、日食か? 冬至の鎮魂祭か?
ヤマタノオロチ・・・高天原から葦原中津・出雲国へ追放されたスサノヲは、ヤマタノオロチ(八俣遠呂智・八岐大蛇)を退治し苦しめられていた親娘を助け、その娘をめとり出雲国に定住する。
このヤマタノオロチ神話は船通山系の斐伊川・日野川などの氾濫か? 越国(現・福井県)=九頭竜川との交戦状態か?
稲羽の素兎・・・スサノヲの子孫オオナムジ(八十禍津日神と大禍津日神の二神)は、稲羽(因幡)国の砂浜で皮を剥がれた素兎(白兎)を助けヤガミヒメ(八上毘売命)に認められたが、兄たちの嫉妬を買い根之堅州国(出雲国東部? 紀伊国熊野? など諸説)に逃げ、スサノヲの娘スセリヒメ(須勢理毘売命) と結ばれる。
スサノヲの試練・・・スサノヲが与えた試練を切り抜けたオオナムジは、オオクニヌシ(大国主神)の名を与えられる。
オオクニヌシの国作り・・・オオクニヌシ(大国主神)は兄たちを打倒し、葦原中津国を支配。スクナビコナ(少名毘古那)やオオモノヌシ(大物主)とともに国作りを始める。
オオクニヌシの国譲り・・・栄え始めた葦原中津国を、アマテラスに狙われその天孫に国を護るよう迫られ、出雲国に大宮殿を建ててもらうことを条件に受諾する。
天孫降臨・・・支配を任されたアマテラスの天孫ニニギノミコト(邇邇芸命)が、神々を率いて日向国(高千穂峰)に降臨する。ニニギは美しいコノハナサクヤヒメ(木花之佐久夜毘売命・木華開耶媛)を妻とし3人の御子を儲ける。ニニギの末子ホヲリ(山幸彦)は、ワタツミ(海神)の宮へ向かい娘トヨタマヒメ(豊玉毘売命)と結婚。
浦島太郎のルーツ。
日向三代・・・ホヲリとトヨタマヒメとの間にウガヤフキアエズ(鵜草葺不合命)を儲け、次に孫カムヤマトイワレビコ(神武天皇)が誕生。天皇家は地上の支配権を確立する。
神武東征・・・カムヤマトイワレビコ(神武天皇)は、東方へ遠征を始め、苦戦を強いられながらも強敵を次々に打破、大和国へ入ると宮を造り天下を平定する。
<神武東征の旅程>
「読む・聴く 日本神話」さんのサイトから転載させて頂きました。
http://yomukiku-mukashi.com/tousei.html
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■ 中巻(なかつまき)
・・・カムヤマトイワレビコ(初代・神武天皇)の東征~疫病流行~ヤマトタケルノミコト(倭建命・日本武尊)の西征(熊襲討伐)・東征~新羅遠征~ホムダワケ(第15代・応神天皇)を記す。
第2代~第9代は「欠史八代」と呼ばれ、系譜などの記述のみで説話などは記載がない。
==略==
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■ 下巻(しもつまき)
・・・オホサザキ(第16代仁徳天皇)~謀略や恋愛スキャンダルに満ちた皇位継承~トヨミケカシキヤヒメ(第33代・推古天皇)を記す。
第23代~第32代は「欠史十代」とも言われ系譜などに止まり具体的な記述が少ない。これは時代が近く自明のことだったからと言われるのだが?
==略==
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★ 「古事記伝」を著した本居宣長(もとおり・のりなが)とその思想
1730年(享保15年)~1801年(享和元年)。
江戸後期の伊勢国松坂の人、名は栄貞。国学者・文献学者・医師。自宅の鈴屋にて門人を集め講義をしたことから鈴屋大人(すずのやのうし)と呼ばれた。
契沖の文献考証と師・賀茂真淵の「古道説」を継承。真淵の勧めで、解読不能に陥っていた「古事記」を研究し解読に成功、約35年を費やして集大成の「古事記伝」を著した。
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「古事記伝」
「古事記」全編に亘る全44巻の註釈書。1764年(明和元年)起稿、1798年(寛政10年)脱稿。版本刊行は1790年(寛政2年)~宣長没後の1822年(文政5年)。
「古事記伝」の成果は、国学の源流を形成して行った。
「古事記」における悲劇の英雄ヤマトタケルに宿る人格。「恨むことは恨み、悲しむべきことは悲しみ泣くことこと、まさしく人の真心である」。
「源氏物語」は日本文学史上の最高傑作だと高く評価。そこにみられる「もののあはれ」という日本固有の自然情緒・精神(抒情)こそ日本文学の本質であると提唱。
日本古来の図り事を加えず善悪ともに有りのままの様を尊ぶ素直な姿勢、人間の在るがままの感情・真心をそのままに肯定する姿勢 ⇒ 「もののあはれ」が文学ひいては人間のあるべき姿である。
日本文学を、外来の儒学(特に支配思想色の強い朱子学)思想、仏教思想のような教条(ドグマ)から解放 ⇒「大和心(やまとごころ)」。
外来的な儒教の教え「漢意(からごころ)」は、自然に背く考え。中国文明=中華思想に特徴的。物事を大袈裟な虚飾によって表現、理屈によって事象を正当化。儒教道徳も仏教道徳も原理・原則を振り翳して人間らしい感情を押し殺している。
武家社会を支配して来た思想の儒教=漢意の弊害、宗教を以って支配層に擦り寄る仏教=仏意の腐敗を排せよ。
「古事記」の「下巻」なんかは、天皇・ヤマト王権の覇権争奪戦で随分と汚れていますね。
「源氏物語」も傑作だとは思いますが、男女の性愛欲・愛憎劇の坩堝ですね。
個人的には、「万葉集」や「枕草子」に「やまとごころ」を強く感じます。
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国学の「古道説」は、儒学(朱子学)に対抗する下層階級の思想体系として確立されて行った。
賀茂真淵は「万葉集」研究から、本居宣長は「古事記」研究から。
だが、この「古道説」の流れは、平田篤胤に至って「復古神道」が提唱されるなど宗教色・民族色を強め、やがて、幕末の「尊王論」「尊王攘夷論」へと変質して行く。
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